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路線と貸切の○と×

路線バス運転士も、貸切バス運転士も同じバス運転士ですが、乗務内容は全く異なります。
どちらも良い点があれば、イヤな点もあります。
バス運転士を目指す方、双方を見極めた上で進路を決めましょう。

路線バス運転士の○(良いところ)

走るルートが決まっている
 
路線バス運転士として入社すると、自分の担当する系統を教習車で走ります。
 教習中に走る道、バス停の位置、バス停でのバスの停車位置を覚えます。
 1人立ちする際、不安であれば、休日に自家用車で走り回り復習します。
 最初の苦労はここまでです。
 覚えてしまえば、後は楽。
 何度も通る道になるので、「時間帯でこの道は混む(空く)。」、
 「この信号はどの位経つと赤になる。」など、まさしく、その道のプロフェッショナルになります。
 走るルートが分かっているのですから、進路を考える心配なく、運転に集中できます。
 何度も走るものですから、体が勝手にウインカーを上げます。
 但しあんまり、ぼーっとしていると経路間違いを起こすので注意!
 ちなみに時間外、休日出勤などで他の系統を走る時には教習はありません。
 同僚運転士、助役などに教えてもらい、休日に路線見学する必要があります。

出退勤時間が「分」まで確定している
 毎日の出退勤時間が決まっている為、自身も家族も予定が立て易いです。
 大げさな話、1年先でも予定が組めます。
 出勤、退勤共に分刻みで決められており、出勤は10分程前に来れば間に合い、
 退勤もほぼ定刻に退社できます。
 異常な渋滞、降雪時は除きますが。

バスに気を使わなくて良い
 私の会社の路線バスは担当車制ではありません。
 (担当車制だったら、本当は嬉しいのですが。車内外磨きまくるよ〜。)
 営業を終え、車庫に入庫しても、洗車機に通し、車内を掃き、ミラーを拭く位。
 楽ちん、楽ちん!
 入庫したらすぐに帰れます。
 ピカピカな外装の貸切と違い、路線バスは気楽なものです。

路線バス運転士の×(イヤなところ)

バスがボロイ
 
振動が大きく、パワーが無く、運転していて疲れます。
 最近の新しいバスは、そうでもありませんが、古いバスになると、ちょっとした段差を乗り越える度に、
 窓枠が「ガタピシ、ガタピシ」と音を立て、ちょっとだけ早いスピードで段差に進入すると、
 戦闘機の座席が緊急脱出するように、体が飛び上がります。
 ホイールベースの長い大型の方が疲れにくく、中型、小型は疲れます。

停車個所が多い
 
バス停ごとに停車する為、走っては止まり、走っては止まりの繰り返しです。
 運転士の性格にもよりますが、これがイヤで貸切運転士に転職した人もいます。
 日中は乗降者が多く、ほとんどのバス停に停車しますが、郊外や夜間になると、バス停を通過することも多く、通過は楽だなと思えるようになります。
 但し、早朝、夜間、正月など道が空いている時は、早発しやすい為、ある程度停車箇所がないと逆に困ることもあります。

ストレスが多い
 不特定多数の乗客が利用する路線バス。
 本当にいろんなお客様がいます。
 運賃収受の際、ICカードは問題ないのですが、現金、回数券のお客様の場合、運賃箱に入れられると同時に、合っているか一瞬で判断しなければなりません。
 中には、ごまかす不正乗車も多く、注意しても素直な客が少なく、その度にストレスが溜まります。
 
また、車内にゴミを残す客も多く、終点に着くごとにゴミ拾いするほどです。

同じ所ばかり走る
 仕方ありませんが、交番によっては同じ所を何往復することもあります。
 これも運転士の性格でしょうが、飽きてきます。
 私はさほど苦にはなりませんが、以前、時間外勤務で朝から深夜まで、同じ所の繰り返しには、さすがに飽きました。

貸切バス運転士の○(良いところ)

旅行気分、いろんな所に行ける、食べれる、温泉あり
 
営業範囲は日本全国なので、あちこち行くことができます。
 貸切時代、私は九州から、東北まで行くことができました。(さすがに北海道はありません。)
 旅行客の場合、観光地巡りが多く、一緒に旅行に出かけているようです。
 観光施設にもよりますが、「乗務員です。見学させてもらえますか?」と尋ねると無料で入れてくれることが多いです。
 食事は、乗務員分も手配される為、自費を使うことがほとんどありません。
 コースによりますが、お客さんの食事と同じ物が食べれます。
 乗務員食なる、乗務員向けの食事や、お弁当を頂きます。
 ドライブインでは「乗務員休憩室」というのがあり、無料で食事や、コーヒーが飲めます。
 宿泊地のホテル、旅館に着くと同宿します。
 (あまり高級な宿な場合、飛ばされる(別のビジネスホテルに宿泊など)こともありますが。)
 温泉旅館に同宿の場合、温泉を楽しむことができます。(これが一番嬉しい〜!)
 夕食、朝食共に、豪華な温泉旅館のご馳走。
 なかなかおいしい仕事ばかりではありませんが、いろんな観光地に行け、その土地の美味しい物を頂き、
 温泉に浸ることができる、旅行好きにはたまらない仕事です。

寸志、お土産が貰える
 
結婚式の送迎などの場合、寸志を頂くことも多く、意外なお小遣いとなります。
 お土産屋さんに立ち寄った場合、乗務員用にお土産をくれることがほとんどです。
 (りんご狩りなら、りんご。かまぼこ工場なら、かまぼこというように。)
 2泊3日で仕事から帰ってくると、両手に持てないくらい頂くこともあります。
 

バスが良い
 
長距離を移動する貸切バスなので、乗り心地が良いんです。
 ラジオ、CDも付いており、回送中に音楽が聴けるのは良いです。
 見た目もデザインが良く、かっこいい。

貸切バス運転士の×(イヤなところ)

上下関係が厳しい
 どの会社にも上下関係はありますが、特に貸切はどの会社も厳しいです。
 2マンで運行中、先輩運転士から教わった道を間違えると、後から足で蹴られます。
 宿泊地に着き、お酒を飲んでいる時は普通なのだが・・・。

24時間営業
 当たり前ですが貸切の為、お客様の都合にあわせ旅行行程を組みます。
 深夜出発もあれば、夜行運行もあります。
 乗客がスヤスヤ、いびきをかいている深夜でも、運転士は眼を見開き、運転しなければなりません。
 当然、眠くならないように出勤前に仮眠を取りますが、日中に熟睡できません。
 いくら日中に寝ても、深夜、お客さんのいびきを聞けば、眠くなるんです。
 また、家族が夕食を取る時間に、出勤するのは悲しいですよ。

バスが担当車制
 自分の担当車で仕事に行くのであれば、最高です。
 車の性格も分かるし、待機時間に車を磨いたりできます。
 ところが、毎日自分の担当車に乗れるわけではありません。
 仕事内容により、他の人の担当車に乗って、出ることもあります。
 これがまた、気を使うんです。
 貸切で行く所は平坦な道ばかりでなく、特に後輪タイヤを擦るくらい細い道が多々あります。
 自分の担当車であれば、別に良いのですが、先輩の担当車に乗ってタイヤを擦っては大変です。
 タイヤに艶出しをかける運転士が多いですから、車庫に帰ってきたら、キレイに磨かなくてはなりません。
 フロントガラスも高速道路を走る為、虫が付きます。
 これもキレイにブラシで取り除きます。
 キレイに磨いておかないと、後で文句を言われます。

2マン運行
 ほとんどのバス会社には、労働組合があると思います。
 その決まりで、運転士の1日の走行キロが定められています。
 どの会社も500キロ程度だと思います。
 これは、1日の旅行行程で500キロを越える場合、運転士を2名つけるということです。
 日帰り旅行で、早朝に出発し、夜に帰ってくる場合、2マン運行になります。
 出発地から朝出発し、500キロ離れたところで宿泊の場合は1マンです。
 また、キロは超えなくても、深夜など時間帯によっては2マンとなります。
 意外と貸切の仕事は2マン運行の仕事が多いです。
 2マンですから、気の合う運転士ばかりなら問題はありませんが、気を使う運転士もいます。
 宿泊を伴えば、2日、3日も一緒。
 寝るのも、風呂も、食事も一緒。気を使いますよ。
 また、新人として貸切バス会社に入社した場合、数年は2マンの仕事が主となります。
 なぜなら、道が分からなく、1人で出すことができないからです。
 その為、長距離、夜行など、キツイ仕事が数年も続きます。
 
道が分からない
 
1回行ったことがある所や県内であれば、道が分かる分、余裕が生まれ、運転に集中できます。
 しかし、貸切の仕事は、分からない道を走ることがほとんどです。
 事前に先輩運転士、ガイドに道を聞いたり、インターネットで調べます。
 この調べる作業も面倒です。
 近くであれば休日に下見にも行けますが、行けない所がほとんど。
 地図を頼りに、どきどきしながら、初めて走る道を運転しなければいけません。
 場所により、交差点に地名の看板が無い所、高速道路の入口(出口)が左にあるのか、
 右にあるのか、宿泊するホテルや、目的地に着いたら、バスをどう着けるのか。
 場所によっては高さ制限のあるトンネル、ホテルにも屋根があります。
 書いたらきりがありません。
 運転するだけでも疲れるのに、分からないことだらけで、本当に疲れます。

ガイドが怖い
 
貸切バスの運転士といえば、ガイドがつきもの。
 若いガイドと温泉旅行に行ける!と思い、貸切バス運転士を目指すあなた、お間違いです。
 何十人ものお客さんを束ねるガイドさんですから、基本的に気が強い女性ばかりです。
 良いガイドさんもいるんですよ。
 これも運転士同様、気が合うか、合わないかです。
 年配ガイドには、よくいじめられました。
 「あなたのバスはきたない。掃除しとるの?」とか、「そんな道も知らないの?こんな道、普通通らんよ。」とか、
 車窓から見学するスポットを、ガイドさんが案内している時、速度落とさず走るものなら、昼食時、文句たらたら言われ、正座しながらのご飯です。
 
年配ガイドは気を使いますが、ベテランの為、道を知っていて心強いという利点があります。

休日に予定が組めない
 
どうしても週末に仕事が入る職業です。
 運転士の休日は、会社が決めます。(会社によって異なります。)
 平日休みが多く、土日も冠婚葬祭以外は希望休暇が出せません。
 旅行行程に合わせる為、毎日、出勤時間が違います。
 旅行行程の前日に、営業担当がお客様の所に、翌日の出発時間を確認する作業がある為、運転士の出勤時間が決まるのは、前日の昼過ぎになります。
 自分が休日の日は、昼過ぎに会社に電話をし、翌日の出勤時間を確認しなければなりません。
 これが面倒くさいんです。
 休日なのに、会社に電話しないといけないし、「明日の出勤は何時かなぁ。」と気になって休めなかったりします。


私の結論
 路線バス運転士の方が、気楽で良い!
 貸切は、いろいろな所に行き、ご馳走を食べれ、温泉にも入れ、楽しみが多いのですが、ガイドさんや、2マン運行の運転士に、気を使います。
 時間も不規則。
 家族の夕食の時間に、今から夜行で出勤は本当に悲しいんです。
 その点、路線バスは時間が決まっており、予定も組みやすい。
 会社から出庫すれば、入庫まで1人で気楽。
 人それぞれの性格でしょうが、私は路線バスが合っています。
 でも、貸切だと、仕事でいろんな所に行く為、交通費をかけずに郵便局に行けるんだよなぁ・・・。