群Gの部分群の列:
G=G0⊃G1⊃G2⊃・・・・・・⊃Gr=e
があって、 e は単位群(単位元のみからなる群)で、Gi+1がGiの
正規部分群すなわち、
G=G0>G1>G2>・・・・・・>Gr=e ・・・(*)
であるとき、(*)のことをGの正規列(正規鎖)という。
ここにGiはGi-1の正規部分群( a∈Gi-1⇒ a-1Gia=Gi )
であるがGの正規部分群である必要はない。
とくに、 すべての剰余群(商群、因子群):
Gi/Gi+1 (i=0,1,2,・・・・・・,r-1)
がアーベル群であるような正規列が1つでもあれば
Gは 可解群(solvable group) であるという。
定理6.
Gが可解群であれば任意の部分群Hも可解群である。
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定理.9→
主張するところは簡潔であるが証明はややむつかしい。
面倒がらずに問304-4.304-7 に何度も引き返して考えよう。
証明:Gが可解群であるから正規列を適当にえらんで
G=G0>G1>G2>・・・・・・>Gr=e
においてGi/Gi+1がアーベル群であるようにできる。
先ず、 Hi=H∩Gi とおけば Hi∩Gi+1=( H∩Gi )∩Gi+1=H∩Gi+1=Hi+1
であるから、
前々節 問304-4の G, H1, H2, H2<G, H1∩H2<H1
の代りにそれぞれ Gi, Hi, Gi+1, Gi+1<Gi, Hi∩Gi+1=Hi+1<Hi
を対応させることにより H i+1< Hi であることが分る。

したがって Hの1つの正規列
H0=H>H1>H2>・・・・・・>Hr=e
が成り立つ。 |
つぎに、Hi/Hi+1がアーベル群であることを示すには前々節問304-7により
Hiの元の交換子 a-1b-1ab が Hi+1 に属することを示せばよい。
a,b∈HiでHiは部分群であるから勿論 a-1b-1ab ∈Hiである。
一方 a,b∈Gi であり、Gi/Gi+1 がアーベル群であることから
前々節 問304-7により a-1b-1ab∈Gi+1
したがって a-1b-1ab∈Hi∩Gi+1=Hi+1 //
定理7.は一時 masking する。必要になれば復元する。
4次方程式までの代数方程式が根号で解くことができる理由は、
ガロアの方程式論の立場から見れば次の定理にもとずく。
定理8
n次の対称群Snは n ≤ 4 なるとき可解群である。
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対称群.交代群の総合的な復習→
証明:
・S2の場合は簡単に S2>e (単位群)で目的が達せられる。
306-1→
・S3の可解性は正規列:S3>A3>e (単位群)で示される。
306-1→
・S4 の可解性を示すには実際に適当な正規列を作ればよい。
次の部分群の列が実際に条件に適することを示せばよい。
306-2→
S4>A4>K>L>e (単位群)
ここに A4は4次の交代群、 303-3→
K={1, (12)(34), (13)(24), (14)(23)}
L={1, (12)(34)} 共にアーベル群である。
(すべての剰余群がアーベル群であるであることは
演習として残して置く。)
定理9.
n次の対称群Snは n ≥ 5 なるとき可解群ではない。
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証明:
仮にSnが可解群であれば定理.6によりその部分群である交代群 An
も可解群である。したがって、
剰余群(因子群)がすべてアーベル群であるような正規列
An>B>・・・・・・ が存在する。
Anは偶置換の全体の作る群であるからその元は(ab)(cd)
の形の置換の若干個の積である。更にいえば、
a,b,c,d がすべて異なる文字であれば(ab)(cd)=(adc)(adb)
また、たとえば a=c ならば (ab)(cd)=(ab)(ad)=(abd)
となるから An の(任意の)元は (abc)の形の要素の積である。
n≥5 であるから a,b,c と異なる文字x,yが存在する。
しかるに (abc)=(xab)(byc)(xab)-1(byc)-1 は交換子であるから
An/B がアーベル群であることにより (abc)∈B
(306-7→) (304-7→)
以上からAnの元はすべてBの元の積であることが分り An⊂B .
一方An⊃B であるから An=B であり、
Anが可解群であることから矛盾を生ずることが結論された。//
( An>B かつ An=B という矛盾!! )
次の用語の意味を上の文章の中から読み取って考えてみよ。
正規列(正規鎖): 可解群:交換子 a-1b-1ab:
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