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Q&A(質問と回答)



当事務所に寄せられた質問および回答の内容を紹介します。



【質   問】
Q01:マスコンクリートの保温養生で特に配慮すべき点はありますか?
Q02:温度応力解析で三次元解析が必要な場合はどのようなケースですか?
Q03:暑中コンクリートの施工ではどのようなことに留意したらよいですか?
Q04:凝結時間を事前に把握することができますか?
Q05:再振動にはどのような効果が期待できますか?
Q06:寒中コンクリートの施工ではどのようなことに留意したらよいですか?
Q07:鉛直パイプクーリングでどの程度の温度低減が期待できますか?
Q08:乾燥収縮量を抑制するには、どのような対策がありますか?
Q09:打継ぎはどのようなことに留意したらよいですか? 
Q10:ブリージングを少なくするには、どのような対策がありますか?
Q11:養生期間で振動・衝撃・荷重等を与えてはいけない期間とは?
Q12:型枠・支保工の取り外しにはどの程度の日数が必要ですか?
Q13:マスコンクリートの温度計測はどのような箇所で行えばよいですか?  
Q14:グリーンカット(レイタンスの除去)はいつ行えばよいですか? 
Q15:打継ぎと打重ねは違うのですか? 
Q16:材料分離を防止するにはどのようなことに留意したらよいですか? 
Q17:仕上げはどのようなことに留意したらよいですか? 
Q18:膨張コンクリートを普通コンクリートに打継いで問題はありませんか? 
Q19:収縮ひずみと膨張ひずみではひび割れ発生にどのような違いがありますか? 
Q20:荷重作用位置により配筋上留意すべき点はありますか? 
Q21:吊鉄筋はどのような構造で必要ですか? 
Q22:寒中コンクリートでボス供試体の強度がでません。どこに問題がありますか? 
Q23:温度ひび割れの測定はいつ行えばよいのですか? 
Q24:凍害を受けたコンクリートはどの程度の強度劣化があるのでしょうか? 
Q25:側面に発生する凍害ひび割れは、なぜ水平方向が卓越するのですか? 
Q26:圧縮強度の発現状況はどのような方法で予測できますか?
Q27:中性化の補修にはどのよな対策がありますか?
Q28:損傷と劣化は違うのですか?
Q29:中性化深さ調査の「ドリル法」は、どのような調査法ですか?


【Keyword】
アルカリ骨材反応ひび割れ [Q19]
圧縮強度 [Q26]
逸散水 [Q08]
打継ぎ [Q09] [Q14] [5]
打重ね [Q14] [Q15] [4]
許容打重ね時間 [Q15]
AE減水剤 [Q06]
温度応力三次元解析 [Q02]
温度ひび割れ [Q01] [Q19]
温度ひび割れ測定時期 [Q23]
温度計測 [Q13]
寒中コンクリート [Q04] [Q06]
乾燥収縮量 [Q08]
乾燥収縮ひび割れ [Q19]
型枠の取り外し時期 [Q11] [Q12]
凝結時間 [Q03] [Q04] [Q06] [Q14]
強度劣化 [Q24]
空気量 [Q03]
グリーンカット [Q14] [Q09] [5]
コールドジョイント [Q03] [Q04] [Q05] [Q14] [Q15]
コンクリート強度 [Q22]
再振動 [Q04] [Q05] [Q06] [D02] [Q09]
サーマルショック [Q13]
材料分離 [Q16]
暑中コンクリート [Q03] [Q04]
ジャンカ [Q16] [D04]
支保工の取り外し時期 [Q11] [Q12]
初期材齢の強度推定 [Q12]
仕上げ [Q17]
スランプ [Q03]
スルー桁 [Q21]
水路橋 [Q21]
繊維補強コンクリート [Q08]
石灰石骨材 [Q08]
せき板の存置期間 [Q11]
積算温度 [Q22] [Q26]
側圧 [Q06]
損傷 [Q28]
単位水量 [Q03] [Q08] [Q10]
タンピング [Q06]
沈降ひび割れ [Q04] [Q06] [D02] [Q10]
中性化 [Q27]
吊鉄筋 [Q20] [Q21]
凍害 [Q24] [Q25] [D11] [D12] [6] [7]
ドリル法 [Q27] [Q29]
内部拘束応力 [Q01] [1.3]
パイプクーリング [Q07]
配筋設計 [Q20] [Q21]
ひび割れ方向 [Q19]
プロクター貫入抵抗値 [Q04] [Q14]
ブリージング [Q05] [Q06] [Q10]
プラスチックひび割れ [Q03] [2]
フェノールフタレイン法 [Q27]
膨張剤 [Q08]
膨張コンクリート [Q18]
ボス供試体 [Q22]
マスコンクリート [Q01] [1] [D01]
マチュリティー [Q26]
養生 [Q01] [Q03] [Q06] [Q11] [Q13]
  保温養生 [Q01]
被覆養生 [Q06]
断熱養生 [Q06]
加熱養生(給熱養生) [Q06]
用水橋 [Q21]
レイタンス [Q14] [D08]
劣化 [Q28]


Q   マスコンクリートの保温養生で特に配慮すべき点はありますか?
Q01:
Aマスコンクリートは、セメントの水和反応により温度上昇量が大きくひび割れ(温度ひび割れ)が発生しやすい。そのために打設直後から積極的に散水し冷却している場合がありますが、これは逆効果です。コンクリートの表面だけを冷却するとコンクリートの内外温度差が大きくなり内部拘束応力によるひび割れを発生させる原因となります。マスコンクリートでは保温養生が基本です。保温は水和反応を促進させ強度発現に寄与するだけでなく、内外温度差を小さくする効果がありますが、その開始時期については留意する必要があります。部材厚が3mほどになると内部中心温度は断熱温度に近くなるために打設直後から積極的に保温を行っても中心温度は余り変わりませんが、薄い部材の場合は最高温度を上昇させることになります。この場合の積極的な保温開始は、内部中心温度がピークアウトした後になります。養生の基本はコンクリートの内外温度差と上昇温度を抑制してその後の温度降下をできるだけ緩やかに行うことにあります。

Q01図-1 一般養生 Q01図-2 保温養生+養生期間延長

Q01図-1に一般養生を行った場合、Q01図-2に打設直後から積極的な保温養生と養生期間を延長した場合の温度履歴図を示す。Q01図-2は積極的な保温対策により内外温度差が小さくなり、養生期間の延長で養生材撤去時のコンクリート表面温度降下量も小さくなっています。ここで、養生期間の延長がなければ内外温度差が小さくなった分だけ養生材撤去時の温度降下量は大きくなり、養生材の撤去時期に留意しなければ保温対策が逆効果となります。一般に、マスコンクリートの積極的な保温対策は養生材の設置期間延長が必要となります。


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Q   温度応力解析で三次元解析が必要な場合はどのようなケースですか?
Q02:
A温度解析の手法には、一次元解析から三次元解析までの3手法があり構造物の形状により一般に使い分けられます。
      

               
            
Q02図-1 一般の部材形状  Q02図-2 三次元解析で扱う部材形状

Q02図-1の部材形状で、Y,Z方向寸法がX方向寸法に比べて長く相当の厚さがあれば内部に発生する熱の多くがX方向に拡散されるために一次元解析(Y,Z方向は断熱境界として取り扱う)を行なっても問題はありません。二次元解析はZ方向の熱移動がないとして取り扱うもので、Z方向に相当の厚さがあれば温度履歴に三次元解析との違いは大きくありません。一般に部材厚が3mほどになると内部の最高温度は余り変化しないことになります。

断熱境界として取り扱う断面寸法は一定である必要があり、Q02図-2の形状や地中連続壁などのように外型枠として壁を打設する場合は壁外面が拘束体となるために三次元解析の対応となります。しかし、一般構造物の多くは二次元解析が可能です。二次元解析は解析時間が短く、安い費用で済みます。


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Q   暑中コンクリートの施工ではどのようなことに留意したらよいですか?
Q03:
A日平均気温が25℃を超える時期に施工するコンクリートは暑中コンクリートとなり、打込み温度は35℃以下で、次に示す問題点とその対策が必要となります。

◆問題点と対策

・単位水量の増大・空気量の減少 

単位水量の増加は温度ひび割れを増加させる要因となり、空気量の減少はワーカビリティや凍結融解抵抗性を低下させます。したがって、流動化剤や高性能減水剤の使用が有効な対策となります。


・時間経過に伴うスランプの低下 

スランプの低下はワーカビリティやポンパビリティ、充填性の悪化を招き打込み欠陥を誘発しやすくなるために流動化剤や高性能減水剤の使用が有効となります。また、できるだけ施工箇所に近い生コン工場を選定することも重要です。


・輸送、運搬中のコンクリート温度の上昇 

生コン車の待機時間を適切とする配車計画や生コン車に幌をかけることや散水するなどの配慮が必要です。

・凝結、硬化の促進 

暑中環境では、凝結が早いためにコールドジョイントや表面気泡(あばた)が発生しやすい。これらを防止するには、凝結時間を考慮した打設計画や養生計画が必要となります。養生対策では、打設前養生と適切な養生開始時期を設定することも重要です。なお、凝結時間と外気温の関係についてはQ14を参照

・早期の水分蒸発が多い 

暑中環境では、外気温が高いために表面からの水分蒸発量が多い。そのためコンクリート表面が乾燥してプラスチックひび割れが発生しやすい。表面仕上げ後、できるだけ早い時期に養生を開始し水分蒸発量を抑制することが重要です。

     
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Q   凝結時間を事前に把握することができますか?
Q04:
A暑中コンクリートではコールドジョイントが、寒中コンクリートでは沈降ひび割れなどが発生しやすい。これらの初期損傷を防止するためにはコンクリートの凝結時間を事前に把握することがとても重要なことです。 

コンクリートの凝結は、打込み温度や外気温、セメント種別、セメント量、混和剤の種別、水セメント比などの多くの要素によりにより変化するために、実施工にあった時間把握が望ましいといえます。

凝結時間は事前に行う温度解析により得られた温度履歴からプロクター貫入抵抗値を算出することができます。一般に、コールドジョイントではプロクター貫入抵抗値で1.45psi以内が安全領域で145psiを超えると極めて危険な領域となります。なお、凝結時間と外気温の関係についてはQ14を参照 

凝結時間を把握することにより再振動時期や仕上げ時期も明確になり、コールドジョイントや沈降ひび割れなどの初期損傷も防止することができます。


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Q   再振動にはどのような効果が期待できますか?
Q05:

Aコンクリート打設後の適切な時期に再度振動を与えることを再振動といいます。コンクリートはブリージングにより上層ほど水セメント比が大きくなり強度低下の原因となると同時に、粗骨材や水平鉄筋の下面に水げきをつくり蜜実性や付着強度も低下させます。また、ブリージングの上昇はコンクリートは沈降を促し、沈降ひび割れの原因にもなります。これらの現象はブリージング量が多くなる寒中コンクリートほど高くなります。 

再振動には、①強度の大きい、密実なコンクリートをつくることができること、②水平鉄筋の下にできる水げきを追い出すこと、③新旧コンクリートの付着を強くすること、④コールドジョイントを防止することなどの効果があります。 

再振動を与える時期は、ブリージングがほぼ終了する時期(コンクリートの配合、温度などに影響されるが一般に1~2時間程度で、「Q14図-1凝結時間の推定」のコールドジョイント安全領域と一致する)が最も適切な時期となります。通常の場合には再振動によりコンクリートは害を受けることはありません。

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Q   寒中コンクリートの施工ではどのようなことに留意したらよいですか?
Q06:

A日平均気温が4℃以下となる時期に施工するコンクリートは寒中コンクリートとなり、以下の問題点とその対策が必要となります。

◆問題点と対策
・コンクリート温度の低下 

初期凍害が発生しやすいためにAE減水剤の使用と適切な養生対策が必要です。初期養生の方法をQ06図-1に示す。

Q06図-1 初期養生の方法(日本建築学会資料)
 

JASS5では、打ち込まれたコンクリートの圧縮強度が軽微な凍結期で3.5N/mm2が得られるまで、凍結作用期で5N/mm2が得られるまでどのような部分についてもコンクリートが凍結しないことにしている。一方、コンクリート標準示方書では、Q06表-1に示す圧縮強度が得られるまでコンクリートの温度を5℃以上に保ち、さらに2日間は0℃以上保つことを標準としている。


Q6表-1 厳しい気象作用を受けるコンクリートの養生終了時の所要圧縮強度の標準(N/mm2)
構造物の露出状態 断面
薄い場合 普通の場合 厚い場合
(1)連続して、あるいはしばしば水に飽和される場合 15 12 10
(2)普通の露出状態にあり、(1)に属さない場合 5 5 5

Q6表-1にある断面厚さの概ねの目安は、「2007年制定コンクリート標準示方書発刊に伴う講習会・質問と回答」では、断面の薄い場合は20~30cm程度以下、断面の厚い場合は90~100cm程度以上、普通の場合は中間程度としている。

一般に、断熱養生では、サーマルショックによるひび割れを防止するために養生期間の延長が不可欠です。また、加熱養生では、加熱終了後の急激な温度低下を避けるために加熱温度を必要以上に高くしないこと(計画養生温度は5℃以上で、かつ打込み時のコンクリート温度以下)も重要で、場合により鋼材などの温度低下を防止する打設前養生も必要となります。


・ブリージングの増大 

表面のW/Cが増加するための強度低下、粗骨材や鉄筋下面に空隙ができやすく圧縮強度や付着強度が低下するために再振動やタンピングを入念に行う。

・凝結、硬化の遅延 

沈降ひび割れが発生しやすいために打設速度を遅めにし、再振動やタンピングを入念に行う。 また、強度発現が遅いためAE減水剤(促進形)を使用し、初期強度を促進させることも有効である。なお、凝結時間と外気温の関係についてはQ14を参照

・側圧の増大 

型枠のはらみが発生しやすくなるために打込み高さや打込み速度に注意した余裕ある打設計画とする。

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Q   鉛直パイプクーリングでどの程度の温度低減が期待できますか?
Q07:

Aパイプクーリングは、コンクリート水和熱による上昇温度を抑制する有効な手段である。その手法のひとつとして鉛直パイプクーリング法があり、これまでも橋梁下部工やボックスカルバートの施工で採用されている。比較的低廉にできる方法で、その概念図をQ07図-1に、橋脚に用いた配置例をQ07図-2Q07図-3に示す。
Q07図-2 パイプ配置平面図
Q07図-1 鉛直パイプクーリング概念図 Q07図-3 パイプ配置正面図

一般に、シース管はφ55mm、園芸ホースはφ4mmのものが採用され、流入流量は毎分3リットル前後である。パイプクーリングにより低減される温度は、パイプの配置間隔や流入水温、流入流量などにより変化するが、5~10℃程度上昇温度を抑制することが期待できます。

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Q   乾燥収縮量を抑制するには、どのような対策がありますか?
Q08:

Aコンクリートの遊離水の蒸発により乾燥収縮は進展する。乾燥収縮量は以下の要因により変化します。

・仮想部材厚(部材の断面積/外気に接する周長)が小さいほど大きい
・湿度が低い環境ほど大きい
・温度が高い環境ほど大きい
・単位水量が多いほど大きい
・鉄筋比が少ないほど大きい
 

乾燥収縮応力度で、①クリープによる応力緩和を50%、②収縮を拘束する構造物の拘束度を50%、③乾燥環境による蒸発逸散水を50%とし、コンクリートの伸び能力を100μとすると、乾燥収縮ひずみが800μを超えるとひび割れが発生します。Q08図-1に全国のレディーミクストコンクリートの乾燥収縮ひずみの測定例を示す。平均ひずみは729μであり、800μを超えるものも相当数存在する。コンクリート施工では、このひずみに温度ひずみが加わるためにコンクリートからひび割れを避けること一般に難しい。

  
 乾燥収縮を抑制する対策は、

①乾燥収縮の小さい骨材を使用する。
 → 石灰石骨材の使用

②単位水量を低減する。
 → 最大骨材寸法の大きい骨材の使用
 → 減水剤の使用

③乾燥による逸散水を抑制する。
 → 十分な湿潤養生
 → 日射および防風対策
 → 型枠の存置期間の延長
 → 収縮低減剤の使用

④膨張剤を使用する。

⑤繊維補強コンクリートする。 などです。
Q08図-1 乾燥収縮ひずみ測定例
 


湿潤養生マット 湿潤・保温養生マット    
保湿効果を高めたコンクリート湿潤養生マット 保温効果を兼ねたコンクリート養生マット

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Q   打継ぎはどのようなことに留意したらよいですか?
Q09:

A通常、コンクリートは一体打ちとして設計される。したがって、打継ぎを行う場合は十分な配慮が必要である。

◆問題点と対策 

打継ぎ部は、構造体としての一体化がしにくいため水密性や耐久性が損なわれやすい。特に、せん断伝達強度が低下するために、打継ぎはせん断力の小さな位置に設け、打継ぎ面を部材の圧縮力の作用方向と直角にするのを原則とする。やむを得ず、せん断力の大きな位置に打継ぎを設ける場合には、打継ぎ面にほぞまたは溝などの凹凸を造るか、適切な鋼材を配置して、これを補強しなければならない。

・水平打継ぎの施工 

レイタンスを取り除かないで打継ぐと引張強度は半減する。打継ぎ対策の基本はレイタンスを確実に除去し、洗浄・吸水のあと新コンクリートを打ち込むことにある。打継ぎ面にセメントペーストやモルタルを塗り、再振動を行うことも有効である。

・鉛直打継ぎの施工 

旧コンクリートのレイタンスを確実に取り除き、サンドブラストやチッピングなどにより打継ぎ面を粗面にし、十分な吸水のあとセメントペースト、モルタルあるいは湿潤面用エポキシ樹脂などを塗布し十分に新コンクリートを締め固める。再振動を行うことも有効である。
 

なお、レイタンスの取り除き時期についてはQ14を参照

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Q   ブリージングを少なくするにはどのような対策がありますか?
Q10:

Aブリージングは、夏期施工に比べて冬期施工で多く発生します。ブリージングは表面のW/Cが増加するための強度低下や粗骨材や鉄筋下面の空隙により圧縮強度や付着強度が低下させるだけでなく沈降ひび割れの原因にもなります。したがって、耐久的なコンクリートを造るためには、ブリージングの少ないコンクリートとすることが大切であります。


◆ブリージング対策 

ブリージング量は、以下の状況で変化する。

粉末度が高く、凝結時間の早いセメントほど、ブリージング量は少ない。
細骨材の粒度が粒度が細かいほど、ブリージング量は減少する。
水セメント比が大きいほど、またスランプが大きいほど、ブリージング量は多くなる。
AE剤の使用は、ブリージング量を低減させる。
コンクリートの温度が低いほど、ブリージング量は多く、長く続く。
過度の締め固め、および仕上げはブリージング量を増大させる。
打込み速度が速いほど、1回の打込み高さが高いほどブリージング量は多くなる。

 以上から、ブリージング量を少なくするには以下の対策となります。

・単位水量を少なくする。 

一般に、セメントが硬化する際に必要なセメント量に対する水量は、①水和に必要な水量として25%、②ゲル水として粒子相互の結合に必要な水量として15%、合計40%程度といわれている。単位水量が増加すると、遊離水が多くなりブリージング量も多くなる。したがって、単位水量を少なくする必要があります。具体的には、スランプの小さなコンクリートとし、AE減水剤、高性能AE減水剤、流動化剤などの使用が考えられます。

・1回の打込み高さを低くし、打込み速度も緩やかにする。 

コンクリートの打込み高さや打込み速度が速いとブリージングが多く発生するため、余裕を持った打設計画が必要となります。また、締め固めや仕上げは過度に行わない。

・ブリージング低減剤を使用する。 

ブリージングを低減する混和剤を使用することや、コンクリートひび割れ制御網目状繊維を混入することなどでもブリージングを少なくすることができます。

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Q   養生期間で振動・衝撃・荷重等を与えてはいけない期間とは?
Q11:

Aまだ十分に硬化していないコンクリートに、過大な振動・衝撃・荷重が作用するとひび割れの発生や損傷を起こす原因となるため、ある期間これらの作用力に対し保護しなければならない。その期間としてンクリート標準示方書ではQ11表-1のように、JASS5ではQ11表-2のように示されている。

Q11表-1 型枠および支保工の取り外しに必要なコンクリートの圧縮強度
部材断面の種類 コンクリートの圧縮強度
(N/mm2)
厚い部材の鉛直または鉛直に近い面、傾いた上面、小さいアーチの外面 フーチングの側面 3.5
薄い部材の鉛直に近い面、45°より傾きの下面、小さいアーチの内面 柱、壁、はりの側面 5.0
橋、建築等のスラブおよびはり、45°より緩い傾きの下面 スラブ、はりの底面、アーチの内面 14.0

Q11表-2 せき板の存置期間を定めるためのコンクリートの圧縮強度および材齢
 セメントの種類 基礎・はり側・柱および壁
早強ポルトランドセメント 普通ポルトランドセメント
高炉セメントA種
シリカセメントA種
フライアッシュセメントA種
高炉セメントB種
シリカセメントB種
フライアッシュセメントB種
コンクリートの圧縮強度 5N/mm2以上
コンクリートの材齢
(日)
平均気温20℃以上 2 4 5
平均気温10℃以上20℃未満 3 6 8
 

また、JASS5では、コンクリートの打込み後、少なくとも1日間はその上を歩行したり作業をしてはならないとしている。

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Q   型枠・支保工の取り外しにはどの程度の日数が必要ですか?
Q12:

A型枠・支保工の取り外しにはQ11表-1Q11表-2に示した強度確認するまでは取り外すことができません。強度確認は、テストピースにより直接確認する方法や温度計測で得られたデータを用いて積算温度により推測する方法などがありますが、目安としてはQ12表-1を用いるとよい。

Q12表-1 高炉セメントの5N/mm2および14N/mm2に到達する材齢の目安(日)
呼び強度 養生温度 5℃ 養生温度 10℃ 養生温度 20℃
5N/mm2 14N/mm2 5N/mm2 14N/mm2 5N/mm2 14N/mm2
21 4 (3) 17 (11) 3 (3) 14 (9) 2 (2) 8 (5)
24 4 (3) 14 (9) 3 (2) 11 (7) 2 (2) 7 (4)
27 3 (3) 11 (8) 3 (2) 8 (6) 2 (2) 6 (4)
30 3 (3) 9 (7) 3 (2) 7 (5) 2 (1) 5 (3)
( )内は普通セメント 高炉スラグ協会資料より


樹脂型枠
文献紹介
     

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Q   マスコンクリートの温度計測はどのような箇所で行えばよいですか?
Q13:

Aコンクリートの強度はセメントの水和作用により増進するもので、一般にはコンクリートの積算温度により評価することができます。養生の管理(初期養生や継続養生の打ち切り時期型枠・支保工の取り外し時期)は、コンクリートの温度が予定した計画養生温度を保つように行われるもので、温度計測はこれらに利用されます。したがって、コンクリート温度が計画と大きく異なる場合は、計画した養生温度になるよう対策を講じる必要があります。通常、コンクリート温度の計測位置は、高温と低温が予想される箇所や構造物の代表となる箇所で計測されますが、計測目的ににより異なります。

初期凍害の防止を目的とした計測箇所は型枠の内面、強度増進の過程を管理するには鉄筋のかぶり位置、温度解析の妥当性の検証には、最高温度の生じる部材中心が適当とされています。これらの箇所での計測データにより、初期養生の打ち切りや型枠・支保工の取り外し時期、サーマルショック*1を防止するための継続養生の打ち切り時期把握することができます。また、最低温度と最高温度の履歴を把握することで温度解析の妥当性を検証することができます。温度計測値と温度解析値とに大きな差異がある場合は逆解析により解析データの見直しが必要となります。

*1サーマルショック:型枠や養生材(養生マット、シート等)の取り外しによりコンクリートの表面が急激に温度低下すると、内外温度差が大きくなりコンクリート表面にひび割れが発生する。


樹脂型枠
文献紹介
     


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Q   グリーンカット(レイタンスの除去)はいつ行えばよいですか?
Q14:

Aコンクリートは打設されるとブリージングが発生し、コンクリート表面にはレイタンスを多く含んだ強度の低い薄層が形成される。これを入念に取り除かないで打継ぎを行うとそこが脆弱となり一体性を欠くことになります。一般には、レイタンスを入念に取り除き、水洗いして吸水した後、新しいコンクリートを打ち込み、旧コンクリートに密着するよう締め固めることが重要です。
 
   
    Q14図-1 凝結時間の推定
打継ぎ面の処理方法には、硬化前に行う場合と硬化後に行う場合があり、硬化前に行う方法は打継ぎ面が広い場合に効率的な方法でありますがコンクリートを打ち込んだ後適切な時期に行う必要があります。あまり早い時期にを行うと骨材を緩め、余分にコンクリートを取り除く恐れがあります。通常は、コンクリートの凝結終了を待って行い、高圧の水などで表面の薄層を取り除きます。これが一般にグリーンカットと呼ばれているものです。 

凝結速度は水和反応の程度に関わり、コンクリート温度と強い相関を持ち、冬期施工では大幅に遅れる傾向があります。凝結の程度を高炉セメント300kg/m3を使用した時の外気温との関係を、当事務所の試算結果としてQ14図-1を示す。なお、同図の凝結時間は打込みからの時間を表わす。コールドジョイントの安全領域はプロクター貫入抵抗値として1.45psi、危険領域は1.45~145psi、振動限界時間である凝結始発は500psi、凝結終了は4,000psiとして計算したものである。 

グリーンカットは、作業上の都合からコンクリート表面に遅延剤を散布して、凝結を遅らせて、時間調整することも可能です。 

硬化後における処理方法は、旧コンクリートがあまり硬くなくて、旧コンクリートの品質が満足なものであれば、高圧の水などでコンクリートの薄層を除去し、粗骨材粒を露出させる方法もあります。一般には、水をかけながら表面をワイヤブラシその他で十分にこすって粗にします。旧コンクリートが硬い時は、表面にサンドブラストを行った後、水で洗う方法が最も確実です。

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Q   打継ぎと打重ねは違うのですか?
Q15:

Aよく似た用語に「打継ぎ」と「打重ね」があります。打継ぎは硬化した状態にあるコンクリートに接して新たなコンクリートを打ち込む行為であり、打重ねはコンクリートの凝結が進んでいる状態にあるコンクリートに新たなコンクリートを打ち込む行為であると定義されています。 

打継ぎは、「Q09」「Q14」に述べた処置が必要ですが、打重ねは原則として処置が必要ではありません。打継ぎと打重ねは新旧コンクリートの時間間隔が大きく異なります。打継ぎ時間はQ14図-1に示した凝結終了以降であり、打重ね時間はコールドジョイント安全領域以内となります。ただし、同図は運搬時間を1時間とした時の打込み後からの時間を示しています。 

打重ね許容時間として、コンクリート標準示方書では外気温が25℃以下(JASS5では25℃未満)の場合は2.5時間、25℃を超える(JASS5では25℃以上)場合は2.0時間としています。この時間を超えると、コールドジョイントが生じる危険性が高まるため必要に応じて遅延剤を使用することになります。

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Q   材料分離を防止するにはどのようなことに留意したらよいですか?
Q16:

Aコンクリートは、セメント、細骨材、粗骨材、水など比重や粒径の異なった固体と液体の混合物である。したがって、運搬中や打込みに際して材料分離を起こすことがある。打込みで粗骨材の分離が生じるとジャンカと呼ばれる初期損傷ができる。材料分離は以下のコンクリートで発生しやすい。

単位水量が大きく、スランプの大きいコンクリート(スランプ5~18cmでは比較的分離しにくい)
単位水量が極端に小さいコンクリート(モルタルの粘着性が不足する)
扁平なもの、あるいは細長い粗骨材は丸みのあるものに比べて分離しやすい。
最大骨材寸法の大きいコンクリート
細骨材率の少ないコンクリート
 

打込みに際しての留意点を、Q16図-1Q16図-4に示す。


【わるい例】 【よい例】
Q16図-1 深い壁や柱を打込む場合の留意点

【わるい例】 【よい例】
中央部から打込む 隅から中央に向かって筒先をこまめに移動させながら打ち込む
Q16図-2 壁や梁を打込む場合の留意点

【わるい例】 【よい例】
Q16図-3 広い範囲を打込む場合の留意点

Q16図-4 壁を打込む場合の打込み間隔(JASS5)
出典:コンクリート工学(vol47 No.11)

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Q   仕上げはどういうことに留意したらよいですか?
Q17:

A一般に、コンクリートからブリージングを避けることはできない。ブリージングの上昇とともにレイタンスも浮上し、表面は水セメント比の高い浮遊物を有する脆弱な層が形成される。したがって、仕上げは細心の注意をもって行う必要がある。コンクリート標準示方書[施工編]では以下の留意点を掲げている。

締め固めが終わり、ほぼ所定の高さおよび形にならしたコンクリートの上面は、しみ出た水がなくなるかまたは上面の水を取り除くまで仕上げてはならない。
仕上げ作業後、コンクリートが固まり始めるまでの間に発生したひび割れは、タンピングまたは再仕上げによって修復しなければならない。
滑らかで密実な表面を必要とする場合には、作業が可能な範囲で、できるだけ遅い時期に、金ごてで強い力を加えてコンクリート上面を仕上げるものとする。

ブリージングがほぼ終了する前に仕上げを行うと、沈降ひび割れの原因をつくり、浮遊物を有するや水セメント比の大きい脆弱な層を作ることになる。また、仕上げが遅いと平坦さや浮遊物の取り除きも困難となるためブリージングと凝結の程度を見極めて行う必要がある。ブリージングがほぼ終了しコンクリートが落ち着く時期は、一般のコンクリートでは1~2時間程度といわれている。この時期は「Q14図-1凝結時間の推定」に示したコールドジョイント安全領域の時間とほぼ一致する。この時間を目安に、ブリージング状況を確認して仕上げを行うのがよい。

仕上げは、表面に浮き出てくるブリージングを処理した後、木ごてでほぼ所定の高さにならし必要に応じて金ごてで仕上げを行うが、あまりこて仕上げを入念に行うと表面にペーストが集まりすぎて収縮ひび割れの原因となるので注意が必要がある。

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Q   膨張コンクリートを普通コンクリートに打継いで問題はありませんか?
Q18:

A膨張材を使用したコンクリートは、コンクリートの収縮を補償するものでひび割れ防止として有効な対策のひとつである。このコンクリートをまだ固まらない状態または硬化後の普通コンクリートあるいは異種膨張コンクリートに打継ぐ場合、この両者には収縮差はありますが打継ぎ部の接着強度に及ぼす影響は小さく問題はありません。

打継ぎ部における普通コンクリートおよび膨張コンクリートの横方向の挙動は、お互いに拘束しあうために膨張コンクリートはその膨張が抑制され、普通コンクリートは膨張(膨張量は膨張コンクリートの無拘束状態の約1/3程度)することになり、両者とも一体となった挙動をすることが実験で確認されています。「膨張材を使用するコンクリートの調合設計・施工指針案・同解説」日本建築学会でも接着強度に及ぼす影響は少ないとの記述があります。


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Q   収縮ひずみと膨張ひずみではひび割れ発生にどのような違いがありますか?
Q19:

A収縮ひずみの代表的なものには温度収縮や乾燥収縮があり、膨張ひずみにはアルカリ骨材反応によるものがあります。収縮ひずみの場合、例えば壁部材の収縮が地盤や底版等に拘束されると自由変形が許されず、Q19図-1に示すように壁部材には青矢印に示す引張力が作用する。この引張力により赤線方向にひび割れが発生します。一方、膨張ひずみの場合、膨張が拘束されるとQ19図-2に示すように青矢印に示す圧縮力が作用する。この圧縮力により直交する方向にポアソン比(1/6)分の引張応力が発生し、赤線方向にひび割れが発生します。このように収縮ひずみや圧縮ひずみが拘束されると全く異なった方向にひび割れが発生することになります。

Q19図-1 収縮ひずみのひび割れ発生図 Q19図-2 圧縮ひずみのひび割れ発生図

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Q   荷重作用位置により配筋上留意すべき点はありますか?
Q20:

A荷重が作用すると部材内部ではその荷重により発生する引張応力と圧縮応力で釣り合いを保たれなければならない。コンクリートは圧縮に強いが引張りに弱い材料であるために通常その引張力は鉄筋で負担される。荷重作用位置により引張応力と圧縮応力の状況(力の流れ)は異なり、その力の流れに対応した配筋が必要となる。一例として、片持張出し梁で説明すると、Q20図-1Q20図-2の作用モーメントMはともにM=P×Lである。このMに対応する配筋をQ20図-2の場合でもQ20図-1と同様に行うと構造体を保持することができない。Q20図-2では吊鉄筋がなければ荷重をささえることができない。

Q20図-1 上端載荷 Q20図-2 下端載荷

           

Q20図-3 に示すような腹部を間接支持する橋脚部横桁もこのようことに留意した配筋設計(P/2が上端載荷、P/2が下端載荷)が必要である。

Q20図-3 橋脚部横桁

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Q   吊鉄筋はどのような構造で必要ですか?
Q21:

A吊鉄筋はQ21図-2に示したような載荷荷重がコンクリート下端に作用する構造で必要となります。Q20図-3に示した橋梁の腹部を横桁で支える構造(間接支持構造)はもちろんですが、Q21図-2に示すような側壁が底版を直接支持する用水橋水路橋(水路橋)のほかQ21図-3の鉄道橋等に用いられているスルー桁橋(下路桁橋)構造の場合にも必要となります。

Q21図-1 側面図
Q21写真-1 用水橋 Q21図-2 用水橋断面図

Q21写真-2 スルー桁橋 Q21図-3 側壁に配置されたPC吊鋼棒

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Q   寒中コンクリートでボス供試体の強度がでません。どこに問題がありますか?
Q22:

Aボス供試体は、コンクリート構造物と同時に打ち込んで一体成形された供試体でその寸法は75□×150mm、100□×200mm、125□×250mmの3種類があり粗骨材の最大寸法等で使い分けされます。
 
    
Q22写真-1 ボス供試体

コンクリート強度は水和熱による積算温度で評価され、積算温度が大きいほど強度が発現します。Q22写真-1にみるようにボス供試体は躯体から凸型した形状であるために放熱面積が大きいこと、また型枠は鋼製であるために熱伝達率が大きいことなどから供試体は躯体に比べ外気温の影響を強く受け、寒中では冷えやすく、暑中では暑くなります。すなわち、供試体のT時間における積算温度は躯体に比べて寒中では小さく、暑中では大きくなります。したがって、寒中コンクリートでは発泡スチロール等の断熱材で覆う、また暑中で直射日光を直接受ける位置では遮光シートや遮熱シートで覆うなど外気温の影響が小さくなる養生を行なわないと正しく強度を評価することができません。


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Q   温度ひび割れの測定はいつ行えばよいのですか?
Q23:

A温度ひび割れの多くは温度降下過程で発生するため測定時期はコンクリート温度が外気温近くまで低下した時に行う。比較的部材厚の薄い壁部材などはコンクリート打設後1週間程度で外気温に近づくが、スラブ構造で部材厚が大きい場合は温度降下に長時間を要するが、壁部材と同様にコンクリート温度が外気温近くまで低下したことを確かめて行う。また、数層に分けて施工する場合は、上層コンクリートの熱影響を受けて下層コンクリートの温度が変化するため、上層コンクリートの打設前に温度ひび割れの有無を確認し、ひび割れがある場合はコンクリート温度が外気温近くまで低下していなくとも測定しておくことが重要である。測定しておくことで適切な打込み間隔を検討するうえでの情報を得ることができる。

測定時間は、日射の影響が少なく日平均気温に近い午前9~10時頃が望ましく、継続調査も一定時刻とする。また、調査時の気象状況の記入も忘れてはならない。


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Q   凍害を受けたコンクリートはどの程度の強度劣化があるのでしょうか?
Q24:

Aコンクリートは凍害を受けるとコンクリートの組織が緩み圧縮強度や静弾性係数など力学的性能は低下する。ここに「建築材料の凍害劣化評価法に関する研究」北海道庁材料開発科の研究論文の一部を紹介する。

Q24図-1 凍結融解回数と相対動弾性係数の関係 Q24図-2 相対動弾性係数と圧縮強度の関係

一般に、コンクリート温度が-2℃になると凍結するといわれている。そして、その凍結融解回数を数えることで相対動弾性係数を求めることでことできる。凍結融解回数は気象庁のアメダスデータから得られる。

Q24図-2、およびQ24図-3をみると、静弾性係数の方が圧縮強度に比べて低下度合いは大きい。

Q24図-3 相対動弾性係数と静弾性係数の関係

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Q   側面に発生する凍害ひび割れは、なぜ水平方向が卓越するのですか?
Q25:

A一般に、天端に発生する凍害ひび割れは亀甲状となるが、側面ではQ25写真-1のように水平方向のひび割れとして発生する。凍害はコンクリートの天端あるいは側面から浸透した水分が凍結融解することで劣化するもので、浸透水はQ25図-1のように水平方向に滞水する。したがって、凍害ひび割れは水平方向に多く発生することになる。

 
Q25写真-1 側面に発生した凍害ひび割れ Q25図-1 水平ひび割れが発生するイメージ図

通常、凍害ひび割れは凍結融解回数のを多い南面に発生しやすい。


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Q   圧縮強度の発現状況はどのような方法で予測できますか?
Q26:

Aコンクリート標準示方書[設計偏]によれば、コンクリートの圧縮強度はQ26式-1により算出されます。
 -----  Q26式-1
ここで、 f'c(t) 材齢t日におけるコンクリートの圧縮強度(N/mm2)
f'ck コンクリートの設計基準強度(N/mm2)
t 材齢(日)
i 設計基準強度の基準材齢(日)、i=28または91
a,b セメントの種類に関する定数でQ26表-1を標準とする。高炉セメントB種を用いる場合は中庸熱セメントと同様な値を用いてよい。
d 材齢28日に対する材齢91日の強度の増加率であり、d(28)はQ26表-1を標準とする。また、セメントの種類によらず、d(91)=1とする。

Q26表-1 定数a、b、dの値
セメントの種類 a b d(28)
 普通ポルトランドセメント 4.5 0.95 1.11
 中庸熱ポルトランドセメント 6.2 0.93 1.15
 早強ポルトランドセメント 2.9 0.97 1.07

ここで、材齢 t はコンクリートの有効材齢でQ26式-2により求められます。


 -----  Q26式-2
 
ここで、 Δti 温度がT(Δti)℃である期間の日数
T0 1℃

Q26式-2T(Δt)に20℃を代入すると、有効材齢 t1日となり標準養生温度の20℃と同一の数値となります。T(Δt)が大きくなる程に有効材齢 t は大きくなり強度が発現していることになります。ここに積算温度(マチュリティー)の考え方があります。積算温度とは時間とコンクリート温度の積で求められるもので、積算温度が一定であればコンクリート配合に関わらず一定の強度を与えるものです。コンクリートは水和反応の進行とともにコンクリート温度は上昇し積算温度は大きなものとなり、特に夏期施工ではコンクリートの打込み温度が高く水和反応も早いために強度発現もは早くなります。

材齢 t の推定はコンクリート標準示方書のQ26式-2のほかに以下の算定法もあります。


 積算温度と有効材齢の別法

積算温度の基準点は一般に-10℃を採用することが定説となっています。この基準温度はこの温度以下では水和反応が停止することを意味しています。積算温度(Tm)と有効材齢 t は簡単に次式で表されます。

 
 -----  Q26式-3
 -----  Q26式-4
ここで、 Δti 温度がT(Δti)℃である期間の日数

コンクリート温度の履歴が把握できれば容易に強度予測は可能となります。事前に温度解析を行えば凝結時間の推定や強度発現状況が把握でき施工計画に利用することができます。


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Q   中性化の補修にはどのような対策がありますか?
Q27:

Aコンクリートの中性化は、大気中の二酸化炭素がコンクリート内に侵入して炭酸化反応を起こすものでpHが低下する現象である。pHが低下すると鉄筋表面の不動態被膜が破壊され、水分と酸素の供給により腐食が生じ構造物の安全性を低下させることになります。中性化の補修対策は中性化の程度により異なり、一般にはQ27表-1の対策が採用されます。

Q27表-1 中性化の程度による一般的な補修工法
中性化の程度 適用性 主な工法
鋼材まで中性化が進んでいない段階 二酸化炭素の侵入を遮断する対策:表面被覆工法
二酸化炭素の侵入を抑制する対策:含浸材塗布工法
アルカリ性を回復する対策:再アルカリ化工法
鋼材まで中性化が進んでいる段階 表面被覆工法
含浸材塗布工法
再アルカリ工法
アルカリ性を回復する対策:断面修復工法
鋼材の腐食が既に進んでいる段階 断面修復工法
再アルカリ工法
◎:主工法として適用すべき工法  :主工法に次いで適用性の高い工法

   

簡易な中性化の調査にはフェノールフタレイン法があります。これは調査箇所にフェノールフタレインの1%エタノール溶液を噴霧する方法で、赤紫色を呈する部分(pH9~10程度以上のアルカリ性)を未中性部、着色しない部分を中性化部と評価する方法である。中性化深さの測定には、はつりによる方法やコア採取による方法があり、現場で行う場合は「はつり法」が、コアによる圧縮強度試験と併せて行う場合は「コア採取法」が用いられることが多い。また、構造物できるだけ傷つけない方法として、現地で行う「ドリル法」がある。ドリル法は、φ10mmのドリルの削孔粉を用いて試験する方法である。

Q27写真-1 フェノールフタレイン法  

その他には示差熱重量分析による方法や粉末X線回析装置を用いる方法、X線マイクロアナライザー装置による方法がありますが、装置が高価であることや試験の実施が専門機関に限定されるなどで広範には利用されていない。


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Q   損傷と劣化は違うのですか?
Q28:

A損傷と劣化は定義が異なります。損傷は「時間経過に伴って進行しないもの」、劣化は「時間経過に伴って進行するもの」と定義されています。したがって、ジャンカやコールドジョイントは損傷であり、アルカリ骨材反応や塩害などは劣化として使い分けされます。


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Q   中性化深さ調査の「ドリル法」とは、どのような調査法ですか?
Q29:

A「ドリル法」は、Q29図-1に示すようにφ10mmのドリルの削孔粉を用いて中性化深さを試験する方法である。この方法は、コンクリートコア法による中性化深さと等しく、破壊の程度や作業量、補修量が少なく面などで合理的な調査方法である。

   

中性化深さは、削孔3個の平均値を算出し、小数点以下1桁に丸めて平均中性化深さとする。削孔3個の値は、それらの平均値との偏差(個々の値-平均値)/平均値×100 が±30%以内でなければならない。削孔3個の値のうち、いずれかの値の偏差が±30%を超える場合は、新たに1孔を削孔し、削孔4個の平均値を求め平均中性化深さとする。また、新たに削孔した4個目の値の偏差が、最初の3個の平均値に対して±30%を超える場合は、さらに1孔を削孔する。この場合は、削孔5個の平均値を平均中性化深さとする。

Q29図-1 ドリル法による簡易試験法  

なお、本試験法による結果は従来の割裂面を対象としたものに比べて若干大きめの値を示す傾向があるが高い相関関係があり安全側の値を示す。精度は高く実用的な方法である。


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