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続・コンクリート診断士は見た!



続・コンクリート診断士は見た!:「連載にあたって」
 

㈱東洋設計のHPでで2004~2008年にわたり「コンクリート診断士は見た!」を掲載した。全国から沢山の励ましをいただいた。ここに「続・コンクリート診断士は見た!」と題して新たに継続執筆することとした。 

この連載コラムは損傷からその原因や防止対策、補修方法などを記述したもので、「コンクリート診断士」、「コンクリート構造診断士」を目指す諸氏だけでなく、施工に携わる人にも活用していただければ幸いである。



【目   次】
D01:橋脚のリフト天端から下方に向かい発生したひび割れ(温度ひび割れ)
D02:ボックスカルバートの頂版下端近傍に水平方向に発生したひび割れ(沈降ひび割れ)
D03:擁壁に発生した表面気泡(あばた)
D04:場所打ち壁下端に発生したジャンカ 
D05:橋脚に発生したエフロレッセンス(一次白華) 
D06:トンネル天井に発生したエフロレッセンス(二次白華) 
D07:RC床版に発生したひび割れ(沈降ひび割れ) 
D08:RC床版に発生した固化レイタンス 
D09:残存型枠に発生したひび割れ(温度ひび割れ) 
D10:堤体に発生したひび割れ(温度ひび割れ) 
D11:橋脚天端に発生した骨材の剥離・剥落(凍害) 
D12:堤体天端に発生したひび割れ(凍害) 
D13:ボックスックスカルバートに発生したひび割れ(塩害) 


【Keyword】
あばた [D03]
ウォータージェット [D08]
エフロレッセンス [D05] [D06] [D09]
塩害 [D13]
温度ひび割れ [D01] [1] [D09] [D10]
寒中コンクリート [D02]
気泡抜き取り器具 [D03]
凝結時間 [D02] [D03] [Q14]
再振動 [D02] [Q04] [Q05] [Q06]
材料分離 [D04] [Q16]
残存型枠 [D09]
充填工法 [D01]
ジャンカ [D04]
収縮ひび割れ [D10]
注入工法 [D01]
沈降ひび割れ [D02] [Q04] [Q06] [D07] [3]
透水性型枠 [D03]
凍害 [D11] [D12] [Q24] [Q25] [6] [7]
白華 [D05] [D06]
ひび割れ幅 [D01]
表面処理工法 [D01]
表面塗布工法 [D01]
表面気泡 [D03]
ブリージング [D02]
補修工法の分類 [D01]
レイタンス [D08]



D01:橋脚のリフト天端から下方に向かい発生したひび割れ(温度ひび割れ)
 脱枠直後に診断士は異様なひび割れを見た。各リフト天端から数本のひび割れが下方に向かい発生していた。

D01写真-1の観察】
柱正面の縦方向ひび割れ
ひび割れは正面に見られるが側面には発生していない。
正確な発生時期は不明であるが、脱枠時には既に確認されている。
ひび割れは各リフトの天端から下方に向かい発生し中程に止まっている。
ひび割れ幅は0.2mm以下で脱枠後、時間経過とともに縮小している。

D01写真-1 リフト天端に発生したひび割れ

当該構造物の断面は、6.50m(幅)×3.0m(奥行き)で、柱高さ22.6mを5リフトで施工したもので、脱枠時には既にひび割れが確認されている。ひび割れは規則性があり、リフト天端から発生し、すべて中程にとまっている。特徴的なことは、ひび割れ幅が時間経過とともに縮小している点である。

ひび割れ原因は、ひび割れ形態や発生時期より温度ひび割れと推測される。そのメカニズムは、打ち重ねるコンクリートの水和熱により先行リフトの天端が熱影響を受け、その時の膨張ひずみが下方に拘束されたものである。D01図-1その概念図を示す。

打ち重ねるコンクリート温度は、①暑中コンクリートであるために打ち込み温度が高いこと、②部材最小断面が3.0mであることから内部温度は断熱温度近くまで上昇すること、③単位セメント量が320kg/m3で比較的富配合であることなどから、ピーク温度はおよそ80℃近くまで上昇することになる。


D01図-1 打ち重ねる場合に想定されるひび割れ D01図-2 温度履歴図

D01図-2の温度履歴を観察すると、先行リフトの中心温度(水色)はリフト打設後もほとんど変化していないが、リフト天端(桃色)は大きく上昇している。ひび割れは、この温度の変化差によるひずみが拘束されて発生したもので、ピークアウト後は急激に温度差が減少するためにひび割れ幅も縮小することになる。したがって、今後のひび割れ幅は進展性がなく、コンクリート標準示方書[設計編]での耐久性上の許容ひび割れ幅は0.4mm(かぶりC=100mm)であることから、現状の0.2mm以下は特に問題となるものではない。
 

補修対策の工法分類をD01表-1に示す。


D01表-1 ひび割れ補修工法の分類
補修目的 ひび割れの現象・原因 ひび割れ幅
*1(mm)
補修工法*2
表面処理工法 注入工法 充填工法 その他の工法
浸透性防水剤の塗布工法 その他
防水性 鉄筋が腐食していない場合 ひび割れ幅の変動・小 0.2以下    
0.2~1    
ひび割れ幅の変動・大 0.2以下    
0.2~1    
耐久性 鉄筋が腐食していない場合 ひび割れ幅の変動・小 0.2以下    
0.2~1    
1以上      
ひび割れ幅の変動・大 0.2以下    
0.2~1    
1以上      
鉄 筋 腐 食   -        
塩    害   -        
反応性骨材   -        
(注) *1  ひび割れ幅3.0mm以上のひび割れは、構造物の欠陥を伴うことが多いので、ここで表示している補修工法だけでなく、構造耐力の補強を含めて実施されるのが普通である。
*2  ○印: 適当と考えられる工法 △印: 条件によっては適当と考えられる工法
●印: 研究段階の工法
出展:コンクリート診断技術'02 日本コンクリート工学協会

D01表-1によると当該ひび割れに関する補修対策工法は、表面処理工法と浸透性防水塗布工法になる。



■表面処理工法(表面塗布工法) 

表面処理工法は、微細なひび割れ(一般に、幅0.2mm以下)の上に、ひび割れ追従性に優れた表面被覆材や目地材などを塗布する工法で、ひび割れ部分のみ被覆する方法と全面を被覆する方法がある。


被覆工法 被覆工法    


■注入工法

注入工法は、0.2mm以上のひび割れ幅に対して有効である。充填剤にはエポキシ樹脂やポリマーセメントなどがあり、材料の選定には施工時の気温や施工部の湿潤状態などに留意する必要がある。近年ではひび割れ幅が0.05mmでも注入できる超微粒子系ポリマーセメントも開発されている。

       


■充填工法 

充填工法は、0.5mm以上の大きなひび割れに適用される工法である。ひび割れに沿って約10mmの幅でコンクリートをUまたはV形にカットし、その部分に補修材を充填するもので、ひび割れが時間経過にともない開口する恐れがある場合には、ウレタン樹脂やシリコン樹脂など柔軟な材料を用いる。

       


■その他の工法

ひび割れに対するその他の補修工法としては、シリコーン系やシラン系の浸透性吸水防止材による含浸塗布工法などがある。

浸透性改質剤 浸透性改質剤 浸透工法  
●「ei」は、発見が困難な微細クラックから、幅が0.5mm程度のひび割れを有するコンクリート構造物を補修する最適な接着剤です。「eh」は0.5mm以上のひび割れに効果的です。

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D02:ボックスカルバートの頂版下端近傍に水平方向に発生したひび割れ(沈降ひび割れ)
 脱枠直後に診断士は異様なひび割れを見た。頂版下端近傍に水平方向に連続したひび割れが発生していた。

D02写真-1の観察】
側面の水平方向ひび割れ
正確な発生時期は不明であるが、脱枠時には既に確認されている。
ひび割れ発生位置は頂版下端近傍で、ほぼ函体全長にわたり水平方向に連続して発生している。
ひび割れ幅は0.5mm程度で比較的大きい。
ひび割れ面はささくれている。

D02写真-1 ボックスカルバート側面に発生したひび割れ

当該構造物の外形断面は、7.50m(幅)×6.50m(高さ)で、底版、側壁、頂版厚はそれぞれ1.50mである。施工は寒中施工されたもので、脱枠時にD02写真-1に示したようなひび割れが側壁側面に発生していた。


D02図-1 ひび割れ発生位置図 D02図-2 配筋図

ひび割れの発生位置をD02図-1に、配筋図をD02図-2に示す。ひび割れはD02図-2の頂版に配置された下筋(D35ctc125)の下方に発生したもので、ほぼ函体全長にわたり連続的に発生している。コンクリート打設は、底版施工(リフト1)の後、側壁、頂版(リフト2)が同時に施工されたものである。 

コンクリートはブリージング水の上昇とともに沈降(D02図-1の青矢印)するもので、上層コンクリートの沈降が型枠や鉄筋などにより拘束され、相対的に下層コンクリートの沈降量が大きい場合には沈降ひび割れとして発生する。寒中ではブリージングが多く、凝結も遅れる(凝結時間と外気温の関係:Q14図-1参照)ために起こりやすいひび割れである。当該施工では、あまり間をおかずに頂版コンクリートが打ち込まれたために生じたものと推測される。通常、打設後1~2時間後に拘束物に沿って発生し、単位水量が多い場合や打込み高さが高く、打込み速度が速い場合には特に留意すべきものである。 

防止対策は、拘束物の上層(ここでは、頂版)のコンクリート打設は、下層(ここでは、側壁)コンクリートの落ち着きを待って行うことや拘束物近傍の再振動も有効である。なお、ブリージングを少なくする対策は、Q10を参照のこと。  

この種のひび割れは、ひび割れ幅の変動は少ない。補修対策はD01表-1を参考するのがよい。



       

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D03:擁壁に発生した表面気泡(あばた)
 脱枠直後に診断士は異様なあばたを見た。擁壁前面に多量に発生していた。

D03写真-1の観察】
擁壁前面のあばた
あばたは擁壁前面に多量に発生している。
最大深さは5mm程度で大きい箇所では粗骨材が見られる。
擁壁の前面は1:0.3の勾配を有している。
 
 
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D03写真-1 擁壁に発生したあばた


 表面気泡は、型枠に接するコンクリートの表面にコンクリート打込み時に巻き込んだ空気、あるいはエントラップドエアや遊離水が排出されずに残って露出し硬化したもので、別名「あばた」ともいう。傾斜を有する型枠面に発生しやすく、スランプが大きいほど多く見られる。特に暑中に多く発生する損傷で、コンクリートの温度が高い場合には凝結が早くなる(凝結時間と外気温の関係:Q14図-1参照)ために気泡や遊離水が上昇できないまま硬化しやすい状況にある。表面だけを過剰に振動させると、水や空気など軽い成分が振動体に引き寄せられ、表面に気泡が集まりやすくなる。また、内部振動機の締め固め不足もあばたの原因となる。D03図-1をみると、スランプ8cmで傾斜角が45°であれば5%前後、60°であれば2%程度のあばた面積となる。



D03図-1 型枠傾斜角度とあばた面積

当該擁壁は4月に施工されたもので、型枠傾斜も70°を超えていることから、通常のあばた面積よりも多く発生していることになる。粗骨材の露出状況やコンクリート打設時期、およびあばたの大きさなどから判断すると、打設時の締め固めが不十分であったと推測される。大きなあばたでは、粗骨材の表面が見られモルタルが未充填であることからも明らかである。

あばたは外観を損ねるだけでなく、コンクリート表面の蜜実度を低下させ、強度低下や中性化を促進させる要因になる。 

あばたの防止対策は、気泡を下から上へ追い出すことが重要で、内部振動機(バイブレータ)と併用して型枠を木槌などでたたき気泡を上へ追い出す方法や透水性型枠、気泡抜き取り器具を用いる方法などがある。

木槌によるたたきの留意点 コンクリートの上昇していく約10cmほど下をたたく。コンクリートの動きや上昇を無視して1箇所ばかりたたいたり、空の型枠部分をたたいたり、すでに打ちあがった下部をたたいてもほとんど効果がない。

補修対策は、あばた部にポリマーセメントペーストを塗布し、直ちにポリマーセメントモルタルを押し込むようにして蜜実に充填して行う。



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D04:場所打ち壁下端に発生したジャンカ
 脱枠直後に診断士は砂利が多く集まってできた空隙の多い不良箇所を見た。場所打ち壁下端の数箇所で発生していた。

D04写真-1の観察】
ジャンカ
壁下端に発生している。
砂利が露出し、表層の砂利を叩くと10mm程度の砂利で剥落するものがある。
最大深さは30mm程度である。
 
 
 
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D04写真-1 壁下端に発生したジャンカ
 

ジャンカは、コンクリートを打設したときに発生する初期損傷のひとつで、材料の分離、締め固め不足、型枠下端からのセメントペーストの漏れなどによって発生する。ジャンカは複雑に配筋された箇所や薄い壁、開口部の下部などコンクリートの打込みにくい箇所で発生しやすい。また、コンクリートの落下高が高い(4m超)と材料分離が起こしやすいが、3m程度でも分離することがあり注意する必要がある。なお、ジャンカを防止する打設法はQ16を参照  

当該壁の壁厚は300mmで壁高は3,300mmである。締め固めは内部振動機を上方より挿入して行った。落下高が大きく材料が分離しやすい状況のあったことや型枠目地や底版打継ぎ部での漏水痕がないことより下端近傍での締め固めが不足していたことなどにより発生したものと推測される。  

ジャンカは強度低下だけでなく中性化や塩害の促進など耐久性を低下させる損傷である。その防止対策は、ワーカビリティの良好なコンクリート配合と材料分離を起こさない打設方法で、コンクリートを十分に締め固めることにある。近年ではジャンカ等の不具合を検出する機器も販売されている。  


補修対策は、D04表-1によると、当該損傷の場合は等級Cに相当する。


D04表-1 等級別ジャンカの程度と補修方法
等級 ジャンカの程度 深さの目安 補修方法
A 砂利が表面に露出していない。    
B 砂利が露出しているが、表層の砂利を叩いても剥落することはなく、はつり取る必要がない程度。 1~3cm ポリマーセメントモルタルなどを塗布
C 砂利が露出し、表層の砂利を叩くと剥落するものもある。しかし、砂利同士の結合力は強く連続的にバラバラと剥落することはない。 1~3cm 不要部分をはつり取り、健全部を露出、ポリマーセメントペーストなどを塗布後、ポリマーセメントモルタルなどを充填する。
D 鋼材のかぶりからやや奥まで砂利が露出し、空洞も見られる。砂利同士の結合力は弱まり、砂利を叩くと連続的にバラバラと剥落することもある。 3~10cm 不要部分をはつり取り、健全部を露出、無収縮モルタルを充填する。
E コンクリートの内部に空洞が多数見られる。セメントペーストのみで砂利が結合している状態で、砂利を叩くと連続的にバラバラと剥落する。 10cm以上 不要部分をはつり取り、健全部を露出、コンクリートで打ち換える。
出典:コンクリート診断技術 '02 (日本コンクリート工学協会)

D04図-1 等級Bのジャンカ補修例
D04図-2 等級Cのジャンカ補修例
D04図-3 等級Dのジャンカ補修例
D04図-4 等級Eのジャンカ補修例


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D05:橋脚に発生したエフロレッセンス(一次白華)
 脱枠後間もない橋脚に診断士は異様な白い斑点を見た。外面全面に発生し気泡痕の周囲は白く色むらとなっていた。

D05写真-1の観察】
橋脚外面のエフロレッセンス
外面全面に脱枠後間もなくして確認された。
エフロレッセンスは外面全体に発生している。
白い斑点は気泡痕に集中し、その周囲は色むらとなっている。
 
 
 
 
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D05写真-1 橋脚に発生したエフロレッセンス
 

白い斑点は、冬期施工された橋脚で脱枠後間もない時期に発生したもので、一般にエフロレッセンス(白華)と呼ばれる析出物である。美観を損ねる問題があるが、析出物そのものが構造物の信頼性を損ねることは少ない。しかし、コンクリートの劣化を促進させる要因となることもあるので注意を要する変状のひとつである。 

エフロレッセンスは、一次エフロレッセンスと二次エフロレッセンスに分けられる。D05図-1にその模式図を示す。当該事例の白い斑点と色むらは一次エフロレッセンスが発生したものである。

D05図-1 エフロレッセンス発生の模式図
 

ポルトランドセメントの主成分は、CaO、SiO2、Al2O3、Fe2O3の4成分で、この4成分で全体の96~98%を占めている。この成分のひとつであるCaOがH2Oと反応すると水酸化カルシュウムCa(OH)2のアルカリ結晶ができ、水和生成物の約1/4として存在する。この水酸化カルシュウムが水と二酸化炭素により炭酸化されるとコンクリート表面に白く現れる炭酸カルシュウムCaCO3(エフロレッセンスの一種)が形成される。 

なお、エフロレッセンスはD05表-1の環境下で発生しやすい。


D05表-1 表発生しやすい環境
気温  低温
 適当な風
材齢  若材齢
季節  冬期
 容易に移動 
施工  不良
  【低温と水分蒸発量の関係】 

空気は気温が高いと多くの水蒸気を含むことができるが、低いと少しの水蒸気しか含むことができない。このため冬期は乾燥状態にある。ここに風が作用すると水分蒸発量は加速度的に増加することになる。 

一次エフロレッセンスは、コンクリートの可溶性成分が余剰水の移動により表面に現れ、蒸発して析出したもので脱枠後の養生が不十分である場合などに見られるものである。「D03:擁壁に発生した表面気泡(あばた)」写真にも同様の一次エフロレッセンスが見られる。また、降雨や養生など外部からの水分が内部に浸透し、表面が乾燥すると二次エフロレッセンスを発生することもある。

 

一次エフロレッセンスは余浄水の移動により発生するものでコンクリート全面に発生することが多く、二次エフロレッセンスは水分の供給される部位に局所的に発生する。白く色むらしている部分は、黒い部分に比べて中性化(炭酸化)が進展している状態にある。 

一次エフロレッセンスの抑制対策は、ワーカビリチーを得られる範囲で単位水量をの少ないコンクリートとし、確実な打込みと脱枠後もシート覆いをするなど急激な乾燥を避けるなどの対策が必要である。 

アルカリ生成物であるエフロレッセンスの除去方法は、酸で洗い流すことができるが、強酸を用いるとコンクリート自体をを損傷させるので注意が必要である。



白華除去剤        

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D06:トンネル天井に発生したエフロレッセンス(二次白華)
 トンネル天井に診断士は異様なつららを見た。30cm超のつららがは幾本も洟垂れていた。

D06写真-1の観察】
トンネル天井のつらら
つららは、覆工コンクリートの継ぎ目部に幾本も発生している。
最大長さは30cmを超える。
 
 
D06写真-1 トンネル天井に発生したつらら


 白華現象のひとつに洟垂れ(はなたれ)がある。これはD05図-1に示す二次エフロレッセンスである。当該エフロレッセンスは、覆工コンクリートの上部からの雨水、地下水など外部からの水がコンクリートに浸透し、表面で乾燥などの作用を受けて生成したものである。覆工コンクリートの継ぎ目部や貫通ひび割れなど止水性が乏しい箇所では容易に水分がコンクリートに供給され、このようなつららが生成される。供給される水量が多いほど大きな洟垂れとなる。本構造物の骨材には石灰石が用いられていた。石灰石の主成分は炭酸カルシューム(CaCO3)で酸に弱く、薄い酸でも溶けだすもので、比較的短い時間でもつららが生成される。また、流れ込む水も土壌等の影響で、酸度(陰イオン)の高い場合はその進展は速くなる。

洟垂れ制御は、水分の供給を阻止することにあり、継ぎ目部の止水性を高める対策となる。



       

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D07:RC床版に発生したひび割れ(沈降ひび割れ)
 RC床版の養生終了後に診断士は異様なひび割れを見た。鉄筋間隔に沿って多数発生していた。

D07写真-1の観察】
RC床版のひび割れ
ひび割れは鉄筋間隔に沿って発生している。
平均ひび割れ幅のは0.6mm程度で、なかには1.0mmを超えるものもある。
 
 
D07写真-1 RC床版に発生したひび割れ


 当該コンクリートは冬期施工されたもので養生終了後に発見された。ひび割れ幅は大きく平均で0.6mm程度あり、なかには1.0mmを超えるものもあった。仕上げは日没後に及び比較的厳しい時間の中で行われた。

ひび割れは、鉄筋間隔で発生していることやひび割れ幅が大きいことなどから沈降ひび割れであることが想像できる。仕上げ時期はQ17に示したように、ブリージングが終了したあと、作業ができる範囲内でできるだけ遅い方がよい。したがって、冬期施工では徹夜作業となる場合もあるため定時で作業を終える計画が必要である。

沈降ひび割れは、かぶりが小さくスランプが大きいほど、鉄筋径が太いほど発生しやすい。D07表-1にその関係による発生確率を示す。


D07表-1 コンクリートの沈降に伴う鉄筋径別のひび割れ発生確率(%)
 かぶり
 (mm)
スランプ 5cm スランプ 8cm スランプ 10cm
13mm 16mm 19mm 13mm 16mm 19mm 13mm 16mm 19mm
20 80.4 87.8 92.5 91.9 98.7 100 100 100 100
25 60 71 78.1 73 83.4 89.9 85.2 94.7 100
40 18.6 34.5 45.6 31.1 47.7 58.9 44.2 61.1 72
50 0 1.8 14.1 4.9 12.7 26.3 5.1 24.7 39
出典:NCHRP 297,Table4


 また、以下の要因でも発生しやすい。

低い温度(ブリージングが多く、凝結も遅い)
締め固め不足
沈降を妨げる形状
打込み高さの違い
打込み速度が速い
早い仕上げ

防止対策は、仕上げはコンクリートの落ち着きを待って行うことで、既に沈降ひび割れが発生しているときは再振動やタンピングなどが有効である。

補修対策はD01表-1を参考するのがよいが、橋面からの水の浸透が常にあるために防水対策は必要である。



       

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D08:RC床版に発生した固化レイタンス
 床版打設の数日後に診断士は異様なレイタンスを見た。天端一面に固化したレイタンスが広がっていた。

D08写真-1の観察】
RC天端の固化レイタンス
露出した粗骨材は点検ハンマーの軽打で遊離するなど表面がぜい弱な状態である。
 
 
  
   
 

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D08写真-1 RC天端の固化レイタンス


 
レイタンスとは、フレッシュコンクリート中のセメントや骨材の微粒分が、ブリージングに伴ないコンクリート表面に浮かび沈殿した微細な物質で、主にセメントの微粒子からできている。この物質は強度や付着力が弱く、水の浸入に対する抵抗性も極めて小さい。したがって、コンクリートの仕上げは、ブリージングを処理した後に行う必要がある。

ブリージング量は主に外気温等に影響されるが、1~2時間程度で終える。当該施工では、コンクリートを打ち終え、休憩の後に仕上げ作業に取りかかった。打設初めから6時間が経過しており、外気温は10℃であったがQ14図-1にみるように既に凝結が進み、ほどなく仕上げができない状況になった。

仕上げは、凝結状況の適切な判断と仕上げ面積に応じた人員配置で行う必要がある。D07は、凝結がまだ進行していない時期での仕上げであり、本事例は凝結が既に進行してしまったために生じた不具合である。ともに凝結時間を適切に判断していたら防げた損傷である。

補修対策は、遊離骨材やぜい弱層の除去と復元であり、防水層との密着性を向上させるための平坦性の確保となる。当該施工ではタンピングがなされていないため、表層部のコンクリートはぜい弱化していると思われ、ある程度のはつり深さは必要である。はつりにはブレーカ工法(人力)とウォータージェット工法(WJ工法)などがあるが、マイクロクラック防止の観点からウォータージェット工法の採用が望ましい。


ウォータージェットの利点 ・ブレーカーと違ってコンクリート表面にひび割れを生じない。
・鉄筋を傷つけない。
・打継ぎ界面で高い付着力が期待できる。(2.0~2.5MPa)
・脆弱なコンクリートは除去され、健全部は残る。


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D09:残存型枠に発生したひび割れ(温度ひび割れ)
 打設の数日後に診断士は異様なひび割れを見た。残存型枠に水平方向ひび割れが堤体全幅で発生していた。

 諸般の事情により、内容削除

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D10:堤体に発生したひび割れ(温度ひび割れ)
 養生マット撤去後に診断士は異様なひび割れを見た。ダム軸直角方向に長いひび割れが発生していた。

D10写真-1の観察】
堤体天端のひび割れ
養生マット撤去時には既に発生している。
ダム軸直角方向に、それぞれのスパンのほぼ中央に1本だけ発生し、直線的である。
ひび割れ幅は大きく0.5~0.6mm程度である。
 
 
  
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D10写真-1 堤体天端に発生したひび割れ

養生マットは、9日間の養生期間を経て撤去された。その時既にひび割れが確認されている。本リフトの打設高さは1.2mで前リフトからの打設間隔は3週間程度である。使用コンクリートは24-5-40BBでその単位セメント量は270kg/m3、打込み温度は16℃であった。この時の終局断熱温度上昇量は48℃で放熱比率は20%程度であることから部材内部では55℃相当まで温度上昇したと考えられる。この温度も2~3日程度でピークアウトし降下過程にはいる。一方、部材表面は内部に比べて放熱比率は高く、ピークアウト時期は早い。内部がピークアウトする時期は既に降下過程にあり内外温度差は大きなものとなっている。マスコンクリート特有な温度履歴である。

部材表面は温度上昇時は内部と比べ温度上昇量が少ないことやピークアウト時期がは早いことなどから表面には引張応力が発生する。その後、表面温度の降下量に比べ内部の降下量が大きくなると圧縮応力が発生するが外部拘束応力(引張応力)が増加するためにひび割れが発生しやすい状況にある。

図10写真-1に堤体天端に発生したひび割れを示したが、堤体の上・下流にも同様のひび割れが鉛直方向に発生している。

①ひび割れ発生は打設後比較的に早い時期に発生していること、②ダム軸の直角方向に、堤体全幅で発生していることなどから温度収縮が拘束されたために発生したひび割れであると推測される。(Q&A・Q19参照)

ひび割れ防止対策は、内外温度差を小さくするためにシート覆いを併用するなど保温と防風対策を行い、十分な保温期間を確保すろことうことや前リフトからの打設間隔をできるだけ短くし外部拘束応力を小さくすることが重要である。

ひび割れは、次リフトが打設されることや無筋構造物であることから問題となることは少ない。


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D11:橋脚天端に発生した骨材の剥離・剥落(凍害
 1970年代に建造された橋脚天端に診断士は異様な光景を見た。骨材はぼろぼろに剥げ落ち鉄筋が露出していた。

D11写真-1の観察】
橋脚天端の凍害
天端かぶり部のコンクリートが剥げ落ち鉄筋が露出している。
南面の劣化状況は北面に比べて激しい。
 
 
  
D11写真-1 橋脚天端に発生した凍害

当該構造物は、1970年代に建造されたもので凍害危険地域にある。12~3月までの日最低気温が零℃を下回る日数はアメダスデータによれば6割を超えている。建造時期から数えると相当の凍結融解を繰り返していたことになる。南面は凍結が融解しやすく同じ外気温であっても凍結融解回数は北面より多い。当該構造物でも南面の劣化は激しくそれを物語っている。

一般に、凍害ひび割れは天端では亀甲状に、側面は水平ひび割れとして発生することが多い。(Q25参照)その後ポップアウトやスケーリングが起こり骨材の剥げ落ちへと進展する。凍害は水の凍結による体積膨張が原因であるが、アルカリ骨材反応と異なりその影響はごく表面の劣化にとどまるため深刻さは小さいが、放置しておくと凍害は確実に進行するため適切な処置が必要である。


D11表-1 凍害に対する補修・補強工法の選定
要求性能 潜伏期 進展期 加速期 劣化期
適用性 工 法 適用性 工 法 適用性 工 法 適用性 工 法
劣化因子の遮断

劣化速度の抑制
表面被覆・表面含浸処理
(表面からの水分侵入防止)
表面被覆
(表面からの水分侵入防止)
表面被覆
(表面からの水分浸入防止、および剥落防止)
表面被覆
(表面からの水分浸入防止、および剥落防止)
    ひび割れ補修
(ひび割れからの水分の浸入防止)
ひび割れ補修
(ひび割れからの水分の浸入防止)
ひび割れ補修
(ひび割れからの水分の浸入防止)
劣化因子の除去     断面修復
(スケーリングやポップアウト部の除去と断面修復)
断面修復
(スケーリングやポップアウト部の除去と鉄筋の防食を目的とした断面修復)
断面修復
(スケーリングやポップアウト部の除去と鉄筋の防食を目的とした断面修復)
耐荷力、変形性能の改善             補強
(PFR・鋼板接着や巻立てなど)
            打換え
(劣化した部分のコンクリートによる打換え)
工法選定の理由(要求性能) 凍害深さが小さく、剛性変化や鉄筋の腐食がない。凍害を受ける地域のため表面被覆や表面含浸処理などの工法が検討対象となる。 凍害深さが大きくなり鉄筋腐食が始まる段階。表面からの水分の浸入を工法が優先されるが、スケーリングやポップアウトがある場合には、断面修復を併用する必要がある。 スケーリング、ポップアウトだけでなく、鉄筋腐食に伴うひび割れ、浮きなど、比較的広い範囲のコンクリートの除去と断面の修復が優先される。特に劣化が激しい部分では補強も考慮に入れる必要がある。 鉄筋の腐食に伴う断面減少により部材の耐荷力の低下が懸念される段階。劣化した部分の断面修復とともに、部材の耐荷性が懸念される箇所については、補強や打換え工法を検討する必要がある。
(注)記号は以下の意味をもつ ○:主工法についで適用性の高い工法
◎:主工法として適用すべき工法 △:構造物の劣化状況に応じて適用を検討する工法
出典:コンクリート診断技術'02(財団法人 日本コンクリート工学協会)

当該構造物は加速期から劣化期にあるため、補修はD11表-1に従い劣化部の除去と断面修復となる。なお、凍害に対して厳しい環境条件下にあるため、表面被覆を併用することが望ましい。また、天端には水勾配を設けて滞水しない工夫なども必要である。


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D12:堤体天端に発生したひび割れ(凍害
 1970年代初頭に建造された山留工に診断士は異様なひび割れを見た。堤体天端に亀甲状のひび割れが発生していた。

D12写真-1の観察】
堤体天端のひび割れ
堤体天端の全面に発生している。
最大ひび割れ幅は5mmを超えるものもある。
ひび割れに沿って黒ずんだ紋様が見られる。
 
 
  
D12写真-1 堤体天端に発生したひび割れ

当該構造物は凍害危険度として軽微な地域に建造されているもので建造後既に40年が経過している。天端に発生したひび割れは亀甲状で最大ひび割れは5mmを超えるものある。ひび割れに沿って黒ずんだ紋様が見られ、ひび割れから水が浸潤している様子がうかがえる。

ポップアウトやスケーリングは見られないが、ひび割れ幅が大きいことから劣化過程は進展期にある。山間部に位置することから美観上の問題は少ないこと、無筋コンクリートであることなどから早急な対応は不要としても今後の劣化進行はさらに速まることが予測される。ことから点検を強化し、必要に応じてD11表-1に沿った対策を行う必要がある。


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D13:ボックスカルバートに発生したひび割れ(塩害
 1970年代中頃に建造されたボックスカルバートに診断士は異様なひび割れを見た。側壁に鉄筋に沿ったひび割れが多数発生していた。

D13写真-1の観察】
側壁のひび割れ
ひび割れは鉄筋に沿って発生している。
剥落部の鉄筋は腐食が進行している。
 
 
  
D13写真-1 側壁に発生したひび割れ

当該構造物は塩害区分Ⅰ(海岸線からの距離:100mを超えて300mまで)に建造されているもので建造後既に35年が経過している。ひび割れ部の打音は明らかに浮き状況であり、剥落部と同様に鉄筋腐食が相当進んでいると推測される。劣化の程度は、D13表-1に示す劣化期の相当する。


D13表-1 塩害に対する補修・補強工法の選定
要求性能 潜伏期 進展期 加速期 劣化期
適用性 工 法 適用性 工 法 適用性 工 法 適用性 工 法
劣化因子の遮断

表面被覆
(表面からのCl-、O2などの腐食性物質の侵入防止)
表面被覆
(表面からのCl-、O2などの腐食性物質の侵入防止)
表面被覆
(表面からのCl-、O2などの腐食性物質の侵入防止)
表面被覆
(表面からのCl-、O2などの腐食性物質の侵入防止)
ひび割れ補修
(ひび割れからのH2O、O2などの腐食性物質の侵入防止)
ひび割れ補修
(ひび割れからのH2O、O2などの腐食性物質の侵入防止)
ひび割れ補修
(ひび割れからのH2O、O2などの腐食性物質の侵入防止)
ひび割れ補修
(ひび割れからのH2O、O2などの腐食性物質の侵入防止)
劣化速度の抑制 電気防食
(予防保全)
電気防食
(鉄筋腐食の進行の大幅な低減)
電気防食
(鉄筋腐食の進行の大幅な低減)
電気防食
(鉄筋腐食の進行の大幅な低減)
劣化因子の除去     電気化学的脱塩
(限界値を超えた塩化物イオン量の低減)
電気化学的脱塩
(限界値を超えた塩化物イオン量の低減)
電気化学的脱塩
(限界値を超えた塩化物イオン量の低減)
    断面修復
(限界値を超えた塩化物イオン量を含むコンクリートの除去)
断面修復
(限界値を超えた塩化物イオン量を含むコンクリートの除去)
断面修復
(限界値を超えた塩化物イオン量を含むコンクリートの除去)
耐荷力、変形性能の改善             補強
(PFR・鋼板接着や巻立てなど)
            打換え
(劣化した部分のコンクリートによる打換え)
工法選定の理由(要求性能) 腐食ひび割れは発生していない。鉄筋近傍では、塩化物イオンが増加しているので、劣化因子の遮断を優先的に検討する。 腐食物質が継続的に発生し、腐食ひび割れに至る段階。劣化因子の遮断だけでは十分な補修効果が期待できないため、鉄筋腐食の進行速度を抑制する工法が優先される。 腐食ひび割れが発生以降、急速な腐食が進行する段階。ひび割れ、浮きを生じたコンクリートの除去や鉄筋腐食の進行を抑制する工法が優先される。必要に応じて表面被覆を併用する。 鉄筋の腐食に伴う断面減少により部材の耐荷力の低下が懸念される段階。劣化した部分の断面修復、鋼材腐食の進行を抑制するとともに、部材の耐荷性が懸念される箇所については、補強工法を検討する必要がある。
(注)記号は以下の意味をもつ ○:主工法についで適用性の高い工法
◎:主工法として適用すべき工法 △:構造物の劣化状況に応じて適用を検討する工法
出典:コンクリート診断技術'02(財団法人 日本コンクリート工学協会)

塩害による性能低下は、一般の劣化と異なり急速に進行するもので、特に劣化期では顕著であるため当該構造物では早急に対策を行う必要がある。


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