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コンクリート構造診断士は見た!



コンクリート構造診断士は見た!:「連載にあたって」

コンクリート構造物の損傷には構造的、力学的要素が強く関与するものもある。既設構造物だけでなく新設構造物でも構造的不具合は存在する。このコラムは損傷から構造特性を学び、耐荷的構造物を築造するために「コンクリート構造診断士は見た!」と題して執筆することとした。

この連載コラムは損傷からその原因や防止対策、補修方法などを記述したもので、「コンクリート診断士」や「コンクリート構造診断士」を目指す諸氏だけでなく、新設構造物の設計者にも活用していただければ幸いである。



【目   次】
S01:PC連続桁で変曲点近傍に発生した橋軸直角方向ひび割れ(曲げひび割れ) 
S02:PC桁の桁端部の発生した橋軸方向斜めひび割れ(アルカリ骨材反応ひび割れ) 
S03:PC中空床版下面に発生した橋軸直角方向ひび割れ(応力拡散ひび割れ) 


【Keyword】
アルカリ骨材反応ひび割れ [S02]
FRP接着工法 [S01]
応力拡散ひび割れ [S03]
鋼板接着工法 [S01]
コンクリート保護工法 [S02]
シフトルール [S01]
せん断ひび割れ [S02]
増厚工法 [S01]
外ケーブル工法 [S01]
断面修復工法 [S02]
表面処理工法 [S02]
ひび割れ注入工法 [S02]
曲げひび割れ [S01]



S01:PC連続桁の変曲点近傍に発生した橋軸直角方向ひび割れ(曲げひび割れ)
 通常は、ひび割れが発生しないPC構造物に診断士は異様なひび割れを見た。変曲点近傍の底版に橋軸直角方向ひび割れが発生していた。

S01写真-1の観察】
橋軸直角方向ひび割れ
側径間の変曲点近傍で、橋軸直角方向にひび割れで底版の全幅にわたり発生している。
側径間ともに同様のひび割れがみられる。
最大ひび割れは0.4mm程度である。

S01写真-1 変曲点近傍に発生したひび割れ

変曲点は中間支点より支間長の2割位置に相当し正負の曲げモーメントが交番する箇所である。その近傍の曲げモーメントは小さく通常は曲げひび割れが生じにくいところである。当該橋梁はPC構造物で変曲点近傍のPC鋼材は曲げモーメントと相似するように部材下縁から上縁へと変曲して配置されている。発生曲げモーメントが小さいために変曲点近傍はPC鋼材を断面図心近くにまとめて配置される傾向がある。図心近くにまとめられたPC鋼材により導入されるプレストレスは、軸力が主体で偏心効果による導入応力は小さい。 

一般にPC構造物はPC鋼材を偏心配置して効果的にプレストレスが利用されるが、図心近くに配置されたPC鋼材は導入されるプレストレス量は少ない。PC構造物はRC構造物と違い部材に配置される鉄筋量は少ない。変曲点は死荷重モーメントがゼロでも活荷重モーメントにより応力は交番する。したがって、変曲点近傍ではPC鋼材をある範囲に分散配置させるか、軸方向鉄筋を十分に配置し曲げ耐力を確保する必要がある。

(A) ひび割れが発生しやすいPC鋼材配置 (B) ひび割れが発生しにくいPC鋼材配置
S01図-1 PC鋼材の配置例

一般に、変曲点近傍のPC鋼材はS01図-1(B)のように部材上下縁近くに分散させ、ひび割れの発生しにくい配置とされるが、当該橋梁ではその分散度合いは小さくひび割れ発生のしやすい(A)配置となっていた。 

曲げとせん断が同時に作用すると部材引張部は曲げモーメントによる引張力のほかにせん断による引張力が付加される。変曲点近傍は曲げモーメントが小さくてもせん断力が比較的大きい箇所であり、このような箇所でのせん断による付加引張力と曲げ引張力の割合は、その他の箇所に比べ大きなものになる。このため、設計では見掛け上の設計曲げモーメントをシフトルールにしたがって算出し応力照査が行われる。


シフトトルール 設計断面での応力照査は部材の有効高dだけ曲げモーメントの増加する方向へ平行移動した曲げモーメントで応力度の照査を行う方法

シフト量:道路橋示方書はシフト量として有効高さdを採用している。しかし、せん断力により付加される引張力の割合は、先に述べたように変曲点近傍では大きくなる。レオンハルト著「プレストレストコンクリート」鹿島出版によれば連続桁の変曲点近傍では1.5dを採用することが望ましいと提言している。ここでは、大きなひび割れ(Max=0.4㎜)が生じている状況を考慮して1.5dを採用すると変曲点近傍の応力度は許容応力度を大きく超過していたことになる。

S01図-3の⑧断面は変曲点近傍の設計図書における設計断面である。

S01図-2 シフトした曲げモーメント図
S01図-3 ⑧断面にシフトさせるモーメント位置(

建設当時の示方書ではこのようなシフトルールの考えはなく、昭和に建造された構造物は変曲点近傍でプレストレス量や軸方向鉄筋量が不足している場合もある。
 

代表的なコンクリート構造物の補強工法としては、鋼板接着工法やFRP接着工法、増厚工法、外ケーブル工法などがある。



■鋼板接着工法
  鋼板接着工法は、コンクリート表面に鋼板を取り付け、鋼板とコンクリートの空隙に注入用接着剤を圧入し、補強部材を接着させて既設部材と一体化させることで耐力の向上を図る工法である。補強工法としては先駆的で使用実績は多い。

鋼板接着工法         



FRP接着工法

FRP接着工法は、連続繊維を1方向あるいは2方向に配置してシート状にした補強材を接着して、既設部材と一体化させ耐力の向上を図る工法である。連続シートには、炭素繊維やアラミド繊維などがある。


連続繊維シート工法      



■増厚工法(上面増厚工法、下面増厚工法)

一般に、RC床版の補強などに多く用いられている工法である。上面増厚工法は、床版の上面を増厚するもので繊維コンクリートが用いられている。下面増厚工法は、床版の下面を増厚するものでポリマーセメントモルタルが使用されている。


床版下面増厚工法       



■外ケーブル工法

外ケーブル工法は、緊張材を部材外に配置して補強部材にプレストレスを導入する工法で大断面の補強に適している。緊張材にはPC鋼材のほかにアラミド繊維なども用いられている。最近は炭素繊維プレート緊張材を用いた工法(アウトプレート工法)も開発されている。 


PC鋼より腺 CFRPプレート      

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S02:PC桁の桁端部に発生した橋軸方向斜めひび割れ(アルカリ骨材反応ひび割れ)
 PC桁の桁端部に診断士は異様なひび割れを見た。桁の上方だけに斜めひび割れが発生していた。

S02写真-1の観察】
橋軸方向の斜めひび割れ
桁端部の上方だけに発生している。
発生した主桁と発生しない主桁があり規則性はない。
主桁はアルカリ骨材反応を有するもので試験により実証されている。

S02写真-1 桁端部に発生した斜めひび割れ

桁端部近傍は、プレストレス力(σx)や支承反力(σy)が集中荷重と作用して応力が拡散する領域でそこに発生するひずみは非線形で複雑である。また、部材内には死活荷重によるアーチ軸力(N)が作用している。S02図-1に桁端部の作用力図を示す。

S02図-1 桁端部の作用力図

一般的に、支点近傍に発生する斜めひび割れはせん断ひび割れと想像しがちである。しかし、S02図-1の青領域(NS領域)は支承反力によるσyが存在し、一般に主応力は小さくせん断ひび割れが発生しない領域である。このことから道路橋示方書は、桁高のH/2点をせん断照査位置としている。これは青領域でせん断応力度が断面図心位置が最大せん断応力となるために決定されたもので青領域でのひび割れは、せん断ひび割れでないことは構造力学的にも明白である。せん断ひび割れは構造的に白領域(S領域)で発生する。

せん断応力度は、τ=S・Q/(B・Ⅰ)で評価される。最大せん断応力度は断面一次モーメント(Q)の最大値を示す断面図心が最も大きく、せん断ひび割れは必ず部材高の中心付近から発生する。S02図-1のひび割れは、部材上方に発生したものであり、部材高の中心部(断面図心位置)でないことからもせん断ひび割れではない。また、ひび割れの発生角度は曲げモーメントM=0で45°でありMの存在でその角度は大きくなる。S02図-1のひび割れ角度は緩く、この点からもせん断ひび割れは否定される。

一般に、S02図-1のプレストレスによるσxは支承反力によるσyより大きい。したがって、アルカリ骨材反応によるひび割れは水平方向に発生する。しかし、荷重作用により部材内には青点線に示したアーチリブが形成されているために、この領域の内部ひずみは拘束される。この領域外、すなわちひび割れ発生領域は応力が開放された領域であり、内部ひずみが開放されやすい状況にある。このためにひび割れは、アーチリブを避け、それに沿った形で発生したものと推測される。


S:せん断力  Q:断面一次モーメント  B:腹部厚  I:断面二次モーメント
 

アルカリ骨材反応は、水分の影響を強く受けて発生する。上フランジ近傍の主桁上方は雨水や冬季間の凍結防止剤等の影響で発生しやすい環境にあり、湿気もこもりがちである。したがって、この部位に発生したひび割れはアルカリ骨材反応によるひび割れが構造的特性により、緩やかな斜めひび割れとなって発生したものと推測される。

一般にアルカリ骨材反応の補修方針は、①水分の供給抑制、②内部水分の散逸促進、③アルカリ供給抑制、④劣化コンクリートの除去、アルカリの除去などであり、補修対策は表面処理工法やコンクリート保護工法、ひび割れ注入工法、断面修復工法などがある。



■表面処理工法(表面塗布工法)

表面塗布工法は、微細なひび割れ(一般に、幅0.2mm以下)の上に、ひび割れ追従性に優れた表面被覆材や目地材などを塗布する工法で、ひび割れ部分のみ被覆する方法と全面を被覆する方法がある。


被覆工法         



■コンクリート保護工法(改質工法)

コンクリートの表層部に改質剤を含浸させて、コンクリート表層部に保護(改質)層を形成して、コンクリート構造物の劣化因子【水分・炭酸ガス・塩化物イオン・その他】の侵入・拡散を抑制する工法である。


含浸防水剤         



■ひび割れ注入工法

ひび割れ部に樹脂やセメント系材料などを注入してコンクリート内部への通気、通水を遮断してコンクリートや鉄筋の劣化、防食を防止するもので、ひび割れ補修工法としては最も普及している。

低圧樹脂注入工法         
 ひび割れの隅々まで、確実に注入。作業時間が大幅に短縮。 圧力管理、硬化確認が容易。ビックス工法は、これまでに極めて多くの施工実績を積んだ工法です。



■断面修復工法

コンクリート断面が劣化により喪失した場合の修復や中性化や塩化物イオンなどの劣化因子を含む部分を除去した場合の断面修復を行う工法で、一般にポリマーセメント系や樹脂モルタル系が用いられている。

大断面修復工法         

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S03:PC中空床版下面に発生した橋軸方向ひび割れ(応力拡散ひび割れ)
 PC中空床版下面に診断士は異様なひび割れを見た。一般に見られる橋軸直角方向ひび割れでなく、橋軸方向(中空ボイド方向)に発生していた。

S02写真-1の観察】
橋軸方向のひび割れ
床版下面に長いひび割れが全長にわたり発生している。
ひび割れはほぼボイド間隔に発生している。
最大ひび割れ幅は0.2mm程度である。
S03写真-1 橋軸方向に発生したひび割れ

当該橋梁は、橋軸方向に円形中空部(ボイド)を有する床版橋で明らかに充実床版橋と異なる構造特性を持っている。中空床版橋の挙動が充実床版橋と大きく異なるのは、応力拡散に伴い中空部に高い応力が生じることで、このことは弾性解析により明らかにされている。


S03図-1 四分円における弾性応力 S03図-2 中空床版橋のひび割れパターン

最大応力はS03図-1に示すように中空部の頂点に生じ、最初の中空部内側のこの位置から発生する。外面での応力は、中空部中心でなく、図に示されているように中空部の間隔の約1/4の位置で発生する。したがって、外面で発生するひび割れはこの1/4点から始まる。実際のひび割れパターンをS03図-2に示す。

上記の引張力に対する最小鋼材量の規定は、わが国の基準には見当たらない。しかし、英国BS5400codeでは、上記ひび割れに対する規定があり、フランジ断面の1%以上の横方向鉄筋を必要とし、その上限は15cm2/mとしている。当該橋梁の場合、横方向鉄筋はD13ctc250で配置され、その下フランジ厚は125mmで、フランジ厚に対する鉄筋比は0.4%程度となり、BS5400基準による最小鉄筋の半分以下である。

ボイドに作用する活荷重強度は、分配効果により各ボイド間で異なる。したがって、常に底版全面に発生するものではない。当該橋梁では外側ボイドに多く発生していたが全体的な中でこの箇所が過酷な状態であったと推測される。


※プレストレスの影響

コンクリート構造の場合は、圧縮ひずみに対し1/6の横ひずみが生じる。プレストレスで圧縮ひずみが導入されるが、同時に、それに直交する方向には引張力(圧縮力の1/6)が作用していることになる。許容応力度法で、設計基準強度σ28=40N/mm2の場合、プレストレス導入直後の圧縮応力度は19N/mm2(長方形)まで許容されている。この時、この応力に直交する方向では約-3N/mm2の引張応力が発生していることになる。引張強度は-4N/mm2(σ28/10と仮定)程度であるため、通常はプレストレス方向(橋軸方向)にひび割れることはない。しかし、ここで付加的な応力が作用しひび割れれば、プレストレスは間接的に関与していることになる。


ひび割れ補修対策はD01表-1によればよい。


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